実は俺の本当の趣味は現代音楽なのだ。NHK−FMで「現代の音楽」という番組を高校生の頃から聴いていた。最初はカセットテープに、そしてDATを手に入れてから本格的に番組を録音し、膨大な量のDATテープが俺の手元に残っている。いずれこれらを紐解きながらゆっくりと聴いてみたいと思っている。
ところで、テリー・ライリーは現代音楽の作曲家だ。と、いうことだが、このアルバムは実に遊び心にあふれ、ロック・スピリットに満ちたものだ。「現代音楽」というと眉間にしわを寄せ、難しい顔で真剣に聴かなきゃならないというイメージがあるが、実はそうでもなく素直に楽しめるものがたくさんあるのだ。
またこのアルバムは、ある時期「現代の音楽」の番組テーマ曲に使われていたことがある。印象的な電子音のアルペジオは一度聴いたら忘れられないだろう。例えばテレビドラマなら、主題曲について番組の最後で紹介されるからわかるのだが、ラジオ番組の場合はそうはいかない。いい曲だなあと思って全曲聴きたくなっても、放送局に問い合わせでもしなければ誰の何という曲かわからない。何回も同じ番組を聞いていて、たまたま紹介されたときは、ぼやっとしていて聞き逃したり、運転中でメモができなくて、頭の中で忘れないように繰り返して呼び続けるのだけれど、赤信号で止まったとたんに奇麗に忘れて「ああちくしょう!」なんてはめになる。
基本的には「電子ミニマルミュージック」と言っていいのだろうが、実に刺激的なシンセサイザーの音色と、それにふさわしいフレーズが工夫されている。優しい音色のアルペジオを突然切り裂くヒステリックな細かい金属的なフレーズ。このフレーズが実にロック的なのだ。ジャケットの写真も怪しげ(失礼)だし、実はこの人、ぶっとんだロック・フリークじゃなかったのかしらん、なんて思ってしまう。
A面には18分40秒のタイトル曲「ア・レイボウ・イン・カーヴド・エアー」が、B面には「ポッピー・ノーグッド・アンド・ザ・ファントム・バンドPoppyNogoodAndThePhantomBand」と名づけられた21分40秒の曲が収められている。B面の曲は混沌としていてやや暗い。フリップ・アンド・イーノの「ノー・プシフッティング」のコンセプト、フリッパートロニクスに近いものがある。川が流れるような音の洪水が、突如として切り裂かれる瞬間が刺激的だ。ううむ。これも聴いてもらわないとわからないだろうなあ。
このアルバムは1971年に発表された。CBSから発売された英盤のアナログレコードだ。
2000.6.11