The Captain’s Journey / Lee Ritenour


年がバレてしまうのだが、1978年と言えば俺は高校生だった。当時ギターの上手い友達が、すごいアルバムだといって得意げに俺に見せていたアルバムがこれだ。しかしハード・ロックにイカレていた俺には全然ピンとこなかった。この手の音楽は、クロスオーバーとか、後にはフュージョンという言葉でも呼ばれるようになり、どちらかと言うと軟弱な音楽という印象があった。ロックは汗水たらして聴くものだと思っていた当時の俺の耳には、ただ素通りしていくだけだった。だがこの年になって、俺を素通りしていった音楽がやたらと気になるようになってきている。これもその1枚で、たまたま職場の近くにある中古CD店で見つけたので手に入れた。

1曲目のタイトル曲「キャプテン・ジャーニー」の前半はいかにもクロスオーバーらしいジャズに近いソフトな演奏だ。だが後半部は「パート2」となっていてがらりと違った展開を見せる。艶やかな粘りのある音、高音から低音に急激な変化を見せるフレーズ。誰かに似ている、と思ったら、これはまるでアラン・ホールズワースのようではないか。ユーロ・ロック的な構成美も感じられる。2曲目の「モーニング・グローリー」はヴォーカルの入ったソウルフルな曲で、3曲目の「シュガーローフ・エクスプレス」は典型的なフュージョンの曲といえるか。4曲目「マッチメーカーズ」はファンキーなリズムの曲。5曲目も模範的なフュージョンと言える。それにしても饒舌なギターだな。6曲目はバラード。コーラスも軽く響いた優しい曲。そして最後7曲目「エチュード」はアコースティック・ギターで弾かれる静かな雰囲気でアルバムの幕を閉じる。

このアルバムは1978年に発表された、リー・リトナーにとっては3枚目のソロ・アルバムということだ。ワーナーミュージック・ジャパンから「FusionClassicsForThe90’s」と題して、1,700円の廉価で発売されたシリーズのCD。日本盤だ。


2000.6.4