今日はカーメルだ。女性ボーカリストのカーメル・マッカートCarmelM‘Courtとダブルベース奏者のジェイムズ・パリスJamesParis、当時はまだ珍しかったシモンズ・エレクトリック・ドラムも使うドラムスのゲリー・ダービーGerryDarbyの3人。このアルバムは「ザ・ドラム・イズ・エブリシング」が出る前に発表された6曲入りのミニ・アルバムだ。ジャケットでは右上がドラムのダービー、左下がベースのパリス、当然だが左上がカーメル。「紅一点」という言葉があるが、ダービーもパリスも黒人のようだからさしずめ「白一点」というところか。
後のファースト・アルバム「ザ・ドラム・イズ・エブリシング」ではキーボードやバックコーラスを入れた演奏になっているが、このアルバムでは本当にベースとドラムとボーカルだけで演奏される。演奏も極めてピュアなもので、ジャズやブルースの味をごりごりと感じさせてくれる。力強いカーメルのボーカルは、ダブル・ベースとドラムの力強さと同等に張り合っている。3人のミュージシャンの拮抗が緊張感を高める。小細工はなし。3人とも技巧的な深みはないが、めざすべきものが心にあり、それを実現するエネルギー、行動の意志があれば、素晴らしい音楽が現れるという見本のようなものだ。収められた曲を紹介する。
1.Tracks Of My Tears
2.Sugar Daddy
3.Guilty
4.Thunder
5.Love Affair
6.Storm
アルバムに収められた6曲のうち「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」と「ギルティ」の2曲を除く4曲がオリジナル曲。「ストーム」はCargoStudiosで1982年6月に録音されたライブで、しっとりとしたブルースなのだが、途中で音がまさに嵐のように乱れる展開が、普通のブルースでないところだ。その他の曲は1982年7月にHammersmithPalaisで録音されたとある。どの曲もどこか「ねじれ」た魅力がある。アルバムA面に置かれた「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」と「シュガー・ダディ」や「ギルティ」は比較的スタンダードな演奏だが、アルバムB面「サンダー」はダブ的なエコーの強いカーメルのボーカルとドラムの連打だけで聴かせるし、「ラブ・アフェアー」もエフェクトを効かせた長いドラムソロが強烈な印象だ。
このアルバムは1982年にRedFlameLtdから発売されたアナログレコードだ。
2000.1.22