Unrest / HENRY COW


これはヘンリー・カウのセカンドアルバム。Unrestとは意味深なタイトルだ。確かにこのアルバムで心の平安は得られない。俺の思い込みかも知れないが、靴下の色もアルバムの内容を表しているようだ。ファーストアルバムは白を基調としたもの、「InPraiseOfLearning」は真っ赤な色。しかしあの赤には参ったな。これぞ本物の赤というくらいの赤だった。

メンバーはGeoffLeighがいなくなって、リンゼイ・クーパーが参加することになる。ティム・ホグキンソンTimHodgkinson(Organ,AltoSax,Clarinet,Piano)、フレッド・フリスFredFrith(StereoGuitar,Violin,Xylophone,Piano)、ジョン・グリーヴスJohnGreaves(Bass,Piano,Voice)、クリス・カトラーChrisCutler(Drums)、リンゼイ・クーパーLindsayCooper(Bassoon,Oboe,Recorder,Voice)。バンドとしての形が整ってきたという感じがする。

A面にはフレッド・フリス名義の曲が2曲とジョン・グリーヴス名義の曲が1曲。B面にはフレッド・フリス名義の小曲から始まり、ヘンリー・カウ名義の曲が4曲続く。A面はファーストアルバムのコンセプトからつながるものだ。ファーストアルバムではあまり感じなかったが、ここでのクリス・カトラーのドラムのスイング感は素晴らしい。B面は大きく印象が異なる。そしてこのアルバムの醍醐味はB面にある。

荒涼たる風景を連想させる「SolemnMusic=厳粛な音楽」に続くのは、まさに不安を象徴するバス−ンの低い音。「Linguaphonie」は「言葉の響き」とでも訳せばいいだろうか、祈るようなVoiceが重なってくる。サウンドの隙間の多さが緊張感を高める。続く「UponEnteringTheHotelAdlon」はリズムのあるフリーのインプロビゼーション曲。破壊的なサウンドだが、やはり音の隙間が多いので荒涼とした雰囲気は変わらない。「Arcades」はオーボエとサックスが主体の小曲。最後の「Deluge」はフリー・ジャズ風に始まり、リズムに乗るようで乗らないところが、まさに「Unrest」の印象。最後はピアノの弾き語り風に静かにアルバムを終える。

このアルバムには発表年が書かれていないが、録音は1974年の2〜3月に行われたと記されている。「Ruins」のレコーディング・エンジニアにマイク・オールドフィールドMikeOldfieldが加わっている。そしてこのアルバムはロバート・ワイアットRobertWyattとウリ・トレプテUriTrepteに捧げるものだとアルバムジャケットの最後に書かれている。


2000.1.3