The Greatest Interpretations Of Billie Holiday / Billie Holiday
アルバムの解説は大和明氏が書かれているが、その中で油井正一・大橋巨泉両氏共訳の書籍「奇妙な果実(晶文社刊)」にあるビリーの言葉が次のように引用されている。はじめて「奇妙な果実」を歌ったときのことだ。「私には遊び半分で集まるナイト・クラブの客に、私の歌の精神を感じとってもらえるかどうか、全く自信がなかったのである。私は客がこの歌を嫌うのではないかと心配した。最初に私が歌った時、ああやっぱり歌ったのは間違いだった、心配していた通りのことが起こった、と思った。歌い終わっても、一つの拍手さえ起こらなかった。そのうち一人の人が気の狂ったような拍手をはじめた。次に全部の人が手を叩いた。」
すさまじい感動が観客の心を打っただろうことがわかる言葉だ。木の枝からぶら下がった死体を「奇妙な果実」と例えた悲惨な歌だが、それを淡々と歌うビリー・ホリデイの声には鬼気迫るものがある。しかしこのようなメッセージ性を持った曲ばかりではなく、恋心を歌い上げたラブ・ソングもいい。
このアルバムは1979年にキングレコードから発売された日本盤のアナログレコードだ。ビリーホリデイの全盛時代の録音が16曲収められている。
1999.12.30