Alive ! / KISS


中学3年生の頃にロックというものを知った。それはたまたま親父の買ってきたラジオ付きカセットテープレコーダーから流れてきたFM番組を聴いてだった。ピンと来た。友達の薦めではなくメディアから受け取ったメッセージが俺の脳を直撃したのだ。メディアは人類の知恵を共有するシステムであり、インターネットの時代を迎えてそれはますます加速を増している。

メディアといえば当時はまだまだ情報量が少なかった。レコードの解説も十分ではなかった。もしかしたらライターすらバンドのことを詳しくは知らなかったのではないかとさえ思う。数少ない音楽雑誌の写真を切り取ったり、付録のポスターを部屋の壁に貼ったりした。だがそれらは所詮「静的」な情報でしかない。最初はそれぞれのメンバーの楽器パートすらわからなかったし、どの曲で誰がボーカルをとっているのかなど長い間わからなかった。MTVなど映像メディアが普及した今からは考えられないことだな。

俺の体験としては、KISSは「デストロイヤー」「アライヴ2」そしてこの「アライヴ」と聴いてきたと覚えている。当時ようやく「輸入盤」があることを知り、この「アライヴ」は輸入盤で手に入れた。重厚なサウンドに仕上がった「アライヴ2」に比べ、少しカラッとしたサウンドで荒削りな印象を持ったことを今でも鮮明に覚えている。きっと俺は年をとっても、この時代に聴いた音楽のことをいつまでもいつまでもはっきりと覚えているのだろう。

このアルバムはデビュー当時に人気が高かったデトロイトをターゲットにライブを行い、レコーディングをしたものだ。当時のコンサートの様子をジーンシモンズは「そこにKISSがいてファンがいる、というだけのことだった。至極ピュアでイノセントなものだった。ヒッピーや政治的な歌は必要充分を超えていたし、人々がロックン・ロールで楽しい時間を過ごしたがっていることを知った」と語ったと、解説で増田勇一氏が書いている。

ロックを信じるとはどういう意味なのだろう?言葉では説明できないが、俺は確かにロックを信じている。いまだにこのアルバムの冒頭「デュース」のイントロを聴いただけで背筋が寒くなる。この凄いアルバムは1975年に発表された。このCDは1996年にリマスターされたもので、1997年にポリグラム株式会社から発売された日本盤。「SuperPriceKISSオリジナル・リマスター・コレクションVol.4」として2枚組で3,059円の廉価となっている。


1999.12.23