フィル・マンザネラはロキシー・ミュージックのギタリスト。ロキシーのファースト・アルバムでは昆虫の目をしたサングラスをかけた「いかつい」姿だったなあ。それがこのアルバムの裏ジャケットでは、全身黒の服で、首には赤いバンダナを巻き、日本風の団扇を持って椅子に座りくつろいでいる。
冒頭1曲目、マンザネラとロバート・ワイアットの共作「Frontera」では、ワイアットのボーカルが聴ける。オーバーダビングでコーラスになっていて、ワイアットの声の素晴らしさにあらためて感動を覚える。歌詞は英語ではない。外国語の教養がないので間違っていたら恥ずかしいのだが、俺にはスペイン語に聞こえる。「Frontera」は「国境(Frontier)」のようだ。重要な人物を探して国境へと向かう、というような曲だ。2曲目はタイトル曲、ダイアモンド・ヘッド。「ダイアモンド・ヘッドDiamondHead」とはハワイ州の中部オアフ島南東部にある岬の名前。インストルメンタルで、ゆったりとした曲だ。イーノが「ギター・トリートメント」とクレジットされていて、ロバート・フリップとのコラボレーションでよく使われた、豊かなサスティーンとフィードバック・サウンドを作り上げている。
3曲目「ビッグ・デイ」ではイーノがボーカルを聴かせてくれる。俺はイーノの歌が大好きだ。もっとボーカリストとして活躍してもらいたいと願っている。作曲もマンザネラとイーノの共作で、イーノのポップ性が余すところなく発揮されている。ペルーについての慕情を歌った曲だ。4曲目「ザ・フレックス」は再びインストルメンタル。これはファンキーな曲で、アンディ・マッケイのサックスがフィーチュアされている。ちなみにエレクトリック・クラヴィネットでエディ・ジョブスンが参加している。5曲目、マンザネラとジョン・ウェットンの共作、「セイム・タイム・ネクスト・ウィーク」では、ウェットンとD.Chanterという女性がリード・ボーカルをとる。変拍子で10/8、6+4という感じのリズムだ。この曲でレコードA面は終わる。
アルバムはこのように、歌曲とインストルメンタル曲が織り交ぜられながら進んでいく。全9曲のうち5曲がボーカル曲で、残り4曲がインストルメンタル曲だ。6曲目「ミス・シャピオ」は再びマンザネラとイーノの共作で、イーノの独特のポップ性が強く感じられる。7曲目は「クワイエット・サン」のメンバー、ビル・マコーミック、チャールズ・ヘイワード、デイヴ・ジャレットがクレジットされたインストルメンタル曲。そして8曲目、エフェクトのかけられたマンザネラのアコースティック・ギターに、アンディ・マッケイのオーボエが重なる静かなデュエット曲。そして最後は6:48の大作「アルマ」で感動的に終わる。これはマンザネラとビル・マコーミックの共作。ボーカルはマコーミック。やさしい歌声だ。そう、この曲だけはイーノが歌ってもウエットンが歌ってもアクが強すぎるだろう。
このアルバムは1975年に発表された、フィル・マンザネラのファースト・ソロアルバムだ。実はLP棚を整理していたら、このアルバムが2枚出てきた。1枚はPolydprから発売された英盤で、これは1986年7月16日に「アビーロード」という店で買ったとメモが入っていた。買ったときのメモを、時折はさんでいることがあるんだ。もう一枚はポリドール株式会社から発売された日本盤で、これはLP盤に「見本盤/非売品」と書かれている。どちらもアナログ・レコードだ。
1999.8.22