このアルバム。やさしい色の奇麗なジャケットだが、ハードな内容だ。CD解説の大鷹俊一さんによると、このアルバムは実質「アンビシャス・ラヴァーズ」の作品だということだ。アンビシャス・ラヴァーズといえば、ファーストアルバム「エンヴィ」はすごかった。あの衝撃は今でも鮮明に覚えている。アート・リンゼイArtoLindsayは「DNA」というバンドのメンバーとして「ノー・ニューヨーク」で紹介されていたが、そのときはピンとこなくて記憶にも残らなかった。ラウンジ・リザーズに参加していたときも、他のメンバーから浮いている感じで居心地が悪かった。だが「アンビシャス・ラヴァーズ」でアート・リンゼイの魅力が爆発した、と言っていいだろう。
このアルバムは、あるバレエ団のために書かれた音楽だ、ということだ。全部で6曲が収録されているが、実質は最初の1曲目「PrettyUgly」のアルバムだ。この曲は26:00の長い曲で、ノイズやサンプリング音、ループ、そしてアート・リンゼイのギターを巧みに組み合わせた、様々な試みのパートの集合である。難解なように聞こえるかも知れないが、音に身をまかせると極めて肉体的なサウンドであることに気付かされるだろう。多分に劇的な音楽だ。
他の5曲はいずれも2分から4分程度の小曲だが、これらも魅力にあふれている。不安定に揺れ動くストリングスが幻想的な「AustereAndHungry」、アート・リンゼイのギターがリズムを組み立てる「NatureOfSlam」、ちょっとコミカルで遊び心のある「PlasticSurgery」が俺の好みだな。
正式に書かれていないのだが、このアルバムはおそらく1990年に発表されたもの。このCDは「MadeToMeasure」シリーズのVol.23としてCrammedDisksから発表され、徳間ジャパンが発売した日本盤。
1999.8.17