All Roads Are Made Of The Flesh / Kip Hanrahan


キップ・ハンラハンは要注目。すごいぞ、この人は。とはいうものの、数あるアルバムの多くを、まだ聴いたことがない。以前、小さなレーベルがかなり高価な値段をつけて国内販売していたことがあって、そのときは泣く泣く買うのをあきらめた。だが株式会社イーストワークス・エンタテインメントという会社が2,600で発売をはじめた。これもその1枚だ。

このアルバムはライブ・アルバム。クレジットを見ると、1985年から1994年までの録音と幅広く集められている。1曲目「バディ・ボールデンのブルース/BuddyBolden’sBlues」はピアノの伴奏にオルガンとサックス、そしてジャック・ブルースが朗々と歌う。2曲目「...ちょうど地下鉄が駅を離れた頃.../...AtTheSameTimeAsTheSubwayTrainWasPullingOutOfTheStation...」は歯切れのいいコンガで始まる熱い曲。ジャック・ブルースのいかにもロック臭いギターと声が渋い。どんな曲でもこの人は「自分」を糊塗せず、それでいて溶け込む不思議さを持っている。3曲目「最初で最後の恋人(12月4日)/TheFirstAndLastToLoveMe(4,December)」はバンドネオン、アコーディオンに似た楽器、が印象的。ボーカルは女性でCarmenLundy。曲の途中で伴奏が一切なくなり、闇の中にボーカルだけがくっきりと浮かび上がるところがすごい!!!!!

はあはあはあ。おもわず興奮してエクスクラメーション・マークを5つも付けてしまった。平常心で淡々とアルバム紹介するのがモットーだったのに。だがすごい。あ、また伴奏が途絶えた。ぐおぉぉぉぉ。渋い!!!!!!!!

いかんいかん。我を忘れてしまう。いやーかっこいいですね〜。4曲目は「マンハッタン東18番街のエリザベスとその恋人が見た9月の夜明け/TheSeptemberDawnShowsItselfToElizabethAndHerLoverOnEast18thStreetInManhattan」はブルース。5曲目「ほぼ同時刻、パセイックのドンに微笑んだ同じ夜明け/TheSameDawn,AtAlmostTheExactSameMoment,ActuallySmilesAtDonInPassaic」は変拍子でポリリズムも感じるところがおもしろい。6曲目「それから1時間経たないうちに、眼を開けずに部屋に射し込んだ光を感じ取ったニューオーリンズのチャールズ/WithinAnHour,InNewOrleans,CharlesKnowsTheLight’sInTheRoomWithoutEvenOpeningHisEyes」は短いピアノ曲。

最後の7曲目、「最初で最後の恋人(10月2日)TheFirstAndLastToLoveMe(2,October)」はジョージ・アダムスのサックスが色っぽい。トラック3の同名曲とおなじで、途中、伴奏が途絶えてサックスのソロになるのだ。この静かさ、間合いの取りかたが素晴らしい。後半リズムが細かく刻まれるようになる展開も刺激的。

だがこのアルバム、キップ・ハンラハン自身は作曲とプロデュースで演奏には加わっていないようだ。1995年に発表されたものらしいが、このCDは1999年に株式会社イーストワークス・エンタテインメントから発売された日本盤。7月8日、大阪梅田地下街のDiskJ.J.で1,560円で購入。

1999.7.22