「ネクター」という清涼飲料があるが、英語で「nectar」というと「濃い果汁」のこと。語源はギリシャ神話の「ネクタル」という、神々の飲む生命の酒のことらしい。ひいては花の蜜、果汁、飲物という意味にも用いられることになったようだ。「ネクターNektar」はこれのドイツ語だ。
確か高校3年生の頃に、当時のプログレッシブ・ロック専門誌でこのアルバムが紹介されていた。そのレビューは最大の賛辞を与えていたので、ジャケットの幻想的なデザインとあいまって、私にとってはいつか必ず聴いてみたい憧れのレコードとなっていた。それが輸入レコード店で見つけたときには、無残にもジャケットの右隅に穴が穿たれていた。当時の流通における習慣で、詳しくはわからないのだが、輸入盤ではときどきこのように穴があけられたり、隅を斜めにカットされたり、縁にマジックで色が塗られたりしたレコードがあり、それらは「2級品」というような意味だった。だから穴のあけられたこのアルバムを見たときには、なんだか少し悲しかったな。
A面B面とおしてトータル・アルバムになっている。このアルバムは決して難解なものではない。ジャケットのデザインがいかにも「ジャーマン・ロック」という暗さを漂わせているが、サウンドは意外に明るい。「ジャーマン・ロック」というよりも、「アメリカン・プログレッシブ」というイメージだ。ギターのカッティングとボーカルのメロディーライン、そして音作りの軽やかさが、そう感じさせるように思う。後に発表された「DownToEarth」というサーカスを舞台にしたアルバムがあるが、これなどは内容をよく表す明るいデザインになっている。これも私の大好きなアルバムなので、近いうちに紹介する。
1999.7.17