Blue Delight / Sun Ra


サン・ラ・オーケストラは学生時代に何年かの「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」で見た記憶がある。そのときもカルトで少しは有名だったが、俺は全然感動を覚えなかった。バックバンドは淡々と演奏をしているが、サン・ラらしきプレーヤーはステージ上をごそごそと歩き回り、演奏中もアンプのセッティングを触ったり、楽器を持ち替えたり、落ち着きなく気まぐれに見えた。真剣さが感じられなかったので感動を覚えなかった。

だがこの「きまぐれ」さがサン・ラの魅力だったのだ。

音楽が迫力をもって迫り、大きな感動を得るときには、演奏者同士あるいは演奏者と観客の一体感が生まれている。しかしサン・ラの音楽にはそれがない。とてもクールだ。さらりと聞き流すとわからないが、演奏者はとても自由である。曲全体がまるで2つあるいは3つの調性で演奏されているように感じる。無調ではない。リズムは守られているが、メロディは調性にとらわれずに奏されている。フリー・ジャズではない。例えばオーネット・コールマンの音楽が、一見プレーヤーは自由きままに演奏しているかに思えるが、実は互いの音をよく聴きながら音を慎重に選び、緊張感の高いバンドプレイとなているのと大きく異なる。

「風にさわぐ木の葉」あるいは「花と戯れる蝶」のようだと言えばいいか。意図的ではなく、心の底から自由に、きままに、自然に沸き起こる感性に操られながら演奏されている。バンドとしての統一感が全くないかといえば、そうではない。だが何かが違う。そうだ。このリラックス感は、すべてがリハーサルのような雰囲気なのだ。

サン・ラの音楽を知りたければ、このアルバムの4曲目「TheyDwellOnOtherPlanes」を聴いてみろ。14分41秒でアルバム中最も長い曲で、とぼけた感じがよく出ていて、いちばんわかりやすい。

このアルバムは1989年にA&Mからた米盤のCD。

1999.7.13