Yankees / John Zorn ・ Derek Bailey ・ George Lewis


昨日のロル・コックスヒルも、ほとんど現代音楽って感じだったが、これはまた恐ろしい。音楽と雑音の境界にあるようなシロモノだ。

何をもって「現代音楽」というのか。「現代」という言葉には、これまでの音楽を超えた何かがそこにあることをあらわしている。これまでにない表現技法で作られていることをあらわしている。一般に言われる音楽の基本要素が「リズム」「メロディー」「ハーモニー」だとすれば、ロル・コックスヒルの音楽には「リズム」や「ハーモニー」が失われていた。ではこのアルバムはどうか。ここには「リズム」や「ハーモニー」どころか「メロディー」すら、ない。

とても奇妙な音がする。楽器を予想された方法で弾いていない。デレク・ベイリーDerekBailey―AcousticAndElectricGuitars、彼の奏法はギターと戯れているようだ。私の大好きなフレッド・フリスが似たようなアプローチをしている。ジョージ・ルイスGeorgeLewis―Trombone、上手く聴かせようなどとは全く思っていないような、間の抜けた気まぐれな音。ジョン・ゾーンJohnZorn―Alto,SopranoSaxophones,Clarinets,GameCalls、甲高く神経質でヒステリックなフレーズは、ジョージ・ルイスと対照的。

「CityCityCity」「TheLegendOfEnosSlaughter」「Who’sOnFirst」「OnGoldenPond」「TheWarningTrack」の5曲がクレジットされているが、どこからどこまでが一曲なのかわからないくらい途切れなく流れてくる。最初は奇妙に感じても、しばらく聴き込むと耳になじんで心地よく感じるから不思議だ。しかし音がもれ聞こえていくだろう隣人には、変に思われるかも知れないなあ。

アルバムの解説には、ジョン・ゾーンが好んで使う「ゲーム・コール」についての記述がある。ゲーム・コールとは「本来狩猟の際に鳥獣をおびき寄せるための呼笛であり、筒状で大きいものでも長さ20cm程度と小型」「動物の鳴き声に合わせて多くの種類(形状)があり、その音色もピーッという呼び子のように甲高い音から、ゴーッという喉を鳴らすような太い音まで幅広く多様である」「86年の来日時のライヴでは、大小合わせて20本以上がテーブルの上に並べられ、むしろメイン楽器としてアルト・サックス以上の頻度で用いられていた」とある。

CDには1993年と書かれているが、もっと以前にアナログ・レコードで聴いた覚えがある。このCDは株式会社ジムコ・ジャパンから発売された日本盤。「言うまでもなく、ロック・ジャズなどあらゆる音楽ファンの必聴盤であることにちがいない」なんて書かれているが、これを信じて買った人は誇大宣伝だと怒るんじゃないかなあ(^_^;)

1999.7.11