暗い。1曲目から、どうしようもなく、暗い。青白い顔でぬーっと現れたように暗い音だ。こんなに暗いサーテイン・レイシィオは初めてだ。クールだけれどもリズム感にあふれ、微妙なドライヴ感のおもしろさを楽しませてくれたサーテイン・レイシィオだったはずだが、1曲目を聴く限りではリズム感の微塵もない。
しかし2曲目で急展開。いきなりの女性スキャットが未来の明るさを感じさせる。ところが、やっぱりなんだか暗い。というか、うーんと考え込んでひねり出したというような音楽だ。我慢しきれずに、体の中からあふれるように涌き出てくる音楽はどこへ行ったのだ。ひとつには電子楽器の多用が原因だ。もともとサーテイン・レイシィオは、ちきちきとしたマシーン的なリズムが独特だったが、リズムマシンやシーケンサーを使ったことはなかったはずだ。しかしここでは多用されている。さらにコード展開が気持ち悪いくらい素直で、まるでテクノみたいだ。
だがコンガの連打で始まる4曲目からは、生のリズム楽器が活躍する。これは、いい。ファンキーだ。と、思えば5曲目は甘いボーカルが主体のテクノ風。6曲目「FunkyHeaven」はムーディーなジャズ。7曲目「Tribeca」は打楽器が多用されたエスニックな曲。というように、方向性を様々に模索しているようなアルバムだ。
このアルバムは1990年に発表されました。こいつはポニー・キャニオンから発売された日本盤のCD。明日ももう一枚、サーテイン・レイシィオのアルバムを紹介しよう。
1999.7.5