Jazz From Hell / Frank Zappa


ザッパの音楽は様々な様式があってひとくくりに表現することができませんが、どのアルバムにも共通して感じられるのは、汗と唾が飛び散ってきそうな肉体的なエネルギーです。ところがこのアルバムは、一聴したところでは、とてもクールな印象を受けます。それは演奏のほとんどを電子楽器で、しかもシーケンサーを多用して作られているからです。

ボーカルも入っていませんし、ザッパのギターが聴けるのは7曲目の「St.Etienne」だけ。これ以外の7曲はすべてザッパが一人でシンクラビアDMSという電子楽器を使って作られた、とあります。唯一「St.Etienne」は、フランク・ザッパ、スティーヴ・ヴァイ、レイ・ホワイト、トニー・マーズ、ボビー・マーティン、エド・マン、スコット・テューンズ、チャド・ワッカーマンによるバンド形態の演奏です。

「JazzFromHell」というタイトルですが、決してジャズ風の演奏に聞こえません。どちらかといえば室内楽の現代音楽風です。それは選ばれた楽器の音色にもよりますし、リズムもコード展開もジャズ風ではありません。しかしインプロビゼーションを主体にしたスピリットは、まさにジャズ以外の何者でもないと言えましょう。

CDケースには次のような折り込みチラシが入っていました。小さくて文字が読みにくいですが、「1/4世紀以上にわたって、フランク・ザッパは7つのレコード会社で60以上のアルバムを発表してきた。これが今ようやくひとつのところに集まった。ライコディスク」と書かれています。そして次のページからは、ファーストアルバムからの主要なアルバムの紹介があります。


またこのCDはピクチャーCDで、次のようなデザインになっています。さらに8曲目の「MassaggioGalore」は、確か以前に聴いた盤には含まれていなかったような気がします。アナログ盤だったかCDだったか記憶になく、怪しいですが。


このアルバムは1986年に発表されました。このCDは1993年にフランク・ザッパ自身によって認定されたものだとの記述があります。音楽産業との軋轢に悩んだザッパの気持ちが込められているような気がします。

12月31日、シカゴの中古CD店「レコード・ブレイカーズ」で買いました。この店には閉店直前に入り、最後までいて「おまえがこの店の今年最後の客だ」と店の男に言われました。そして何枚かのCDをレジに持っていきましたが、このアルバムを見つけた店長(らしき白人の男)は、「おまえもザッパが好きなのか。ザッパは最高だ。今度シカゴにマザーズのメンバーがやってきてコンサートをするのだ。待ち遠しいぜ」と話してくれました。

また「教えて欲しいことがある」といい、陳列ケースからローリング・ストーンズの日本盤CDを出してきました。そのCDは日本独自の編集盤で、ボーナス・トラックが入ったものでした。日本語で書かれた曲名がわからない、ということでしたので、KAXさんと一緒に説明してやりました。

他のCD店でも同じように、いろいろなミュージシャンの日本のみ発売の特別編集盤が、5割り増しくらいの結構いい値で売られているのを見かけました。たとえ1曲でもボーナス・トラックが入っていれば、コレクターには喉から手が出るほど欲しくなるものなのでしょうね。

1999.1.13