Tone Dialing / Ornette Coleman & PRIME TIME


子どもの頃、私は引込み思案な子どもでした。小児喘息で一週間に一日、とりわけ休み明けの月曜日に発作が出る傾向があって、よく学校を休みました。学校を休んだ日には、布団の中で父にもらった本を読むのが大好きでした。父も本が大好きで、仕事も大阪で図書館司書を勤めていました。病気で目が悪くなり、転職を余儀なくされましたが、本への情熱は熱く、年をとってから自分の生涯を一冊の本に著わすことになります。

病弱で臆病だった私ですが、中学生の頃からロックを聴くようになり、高校、大学とバンドをするようになります。特に大学時代のバンドはオリジナルの曲を作曲し、いまでも親交のある素晴らしい友人たちと演奏することができ、音楽を通じて多くのことを学んだ気がします。

例えば。人に感動を与える演奏をするためには、100の技術を100%演奏するのではだめで、常に目標とするものの120%の力を保持していなければならない。しかし時には自分をおおきく見せ、誇張し、はったりをきかせることも必要。自分が出した音が生きるか死ぬか、演奏に埋没するのか浮きあがるのか、調和を保つか不快感を与えるか、それらはバンド全体の音によって左右され、同じ音でも様々な印象を与えるものだ。ということなどです。

学生のようにあふれる時間を持たない私は、もう知らないメンバーとバンドを組むという時間もエネルギーもありません。しかし気の合う友とは再び音楽をやりたいものだと思います。このことを友人でバンドのメンバーであったKAXさんに語ると、彼は「俺もそうだ。だからジャズ・セッションに興味がある」といいました。

オーネット・コールマンの音楽には、自由奔放さが感じられます。しかしKAXさんは、「ジャスにおける自由なインプロビゼーションは、豊富な音楽的知識の上にあってこそ素晴らしいものとなる」といいます。おそらくオーネット・コールマンの音楽には、古今東西のさまざまな音楽のセオリーの上に完成されているのだろうと思われます。

1曲目は「StreetBlues」。どれかのアルバムで聴いたことがあるような、なんだか懐かしい、ほのぼのとしたリズムに乗ったハーモロディック・ミュージックを楽しむことができます。しかし2曲目「SearchForLife」は冒頭にオーネット・コールマンにしては珍しいピアノの音が聞え、女性ボーカルが、キング・イエローマンのような気だるい歌を口ずさみます。このスタイルは確か「トースト」といったはず。

しかし3曲目からは、それぞれにオーネットらしい演奏を楽しむことができます。アルバムに収められたのは全部で16曲。メンバーはずいぶん変わっているようですが。久しぶりに聴くオーネット・コールマン&プライム・タイムの演奏としては、十分に満足しました。

このアルバムは1995年にHarmolodicInc.tから発表されました。このCDは1月1日、ロサンゼルスのサンセット・ブルーバードにあるタワーレコードで入手した米盤です。$17.99でした。

1999.1.12