Renaissance / VANILLA FUDGE


ヴァニラ・ファッジも俺にはまだよくわからないグループだ。しかし妙に心を惹かれるところがある。いつか必ずその全貌をつかんでやるぞと思っているのだが、なかなかその機会にめぐまれない。さて、この、アルバム。ほとんど予備知識なしに聴いたのだが、実に自然に楽しめるアルバムだった。発表されたのは1968年。思うにこの当時の「斬新なアート・ロック」というものは、結局多くのミュージシャンに影響を与え、その成果が現在に花開き普遍的な表現に育っているのだ。「芸術」とはキワモノであり好事家の道楽でしかない。それが一般に認められ大衆化することで「芸術」は「芸能」に変わっていくのだ。

このアルバムを聴いて「けっこういいじゃん」なんて思う奴は、音楽を語らないでくれ。生涯をポップ・ミュージックに捧げたバカモノの心など理解できないに決まっているからだ。ニューヨークで集まった4人のバカモノの名前はカーマイン・アピスCarmineAppice(drums)、ティム・ボガードTimBogerd(bass)、ビンセント・マーテルVincentMartell(guitar)、マーク・スタインMarkStein(organ)。このアルバムは彼らの3rdアルバムにあたる。

ヴァニラ・ファッジの特徴は、重たいリズムに重なる重厚なハモンド・オルガンのサウンドだ。彼らのサウンドに注目したジェフ・ベックがロッド・スチュワートを誘いバンドを作ろうとした話がある。だがロッド・スチュワートが別のバンドを始動させていて、ベックの交通事故もあって実現しなかったらしいが、その後カーマイン・アピスとティム・ボガードは「カクタス」を経て「ベック・ボガード・&・アピス」でロック史上に名を残すことになる。

このアルバムは1968年に発表された。このCDは1991年にRepertoireRecordsから発売されたドイツ盤を、MSIが日本語の訳詞や解説を付けて国内販売したもの。1993年5月の日付で小倉エージ氏が解説を書いている。


1998.12.3