これは本当にカバーディルか、と思いました。何度聴いても違う声。あまり気になるので、この手の音楽に得意な弟に電話で聞いてみました。私の弟もベースを弾き、学生時代は放送部にいて音楽フリークです。彼もこのアルバムは聴いたことがあり、異様に高いボーカルになっていることは評判であるらしく、「ハーモナイザーなどで高く加工しているのではないか」と言っていました。
1曲目の「シェイク・マイ・ツリー」はもう全然違う人のように聞こえます。でもよーく聴くと、低音部ではカバーディルらしい感じもすます。2曲目「永遠の女」、3曲目「ア・リトル・ホワイル」ではかろうじてカバーディルらしさがわかります。8曲目「ルック・アット・ユアセルフ」はカントリー・ブルース調の曲で、ここではカバーディルらしい歌を聴くことができます。それでも後半は、どうも若干高い音にエフェクトしているようです。
デビッド・カバーディルDavidCoverdaleはディープ・パープルの後期ボーカリスト。いわゆる黄金期のイアン・ギランとは異なる声のキャラクターを持ち、そのだみ声の渋さが魅力です。ところがこのアルバムでは高い声でシャウトしたり、ほとんどの曲でカバーディルらしさが失われています。作曲された曲に高い声が必要なら、カバーディルではないボーカリストが歌えばよかったのに、と思えてなりません。まるでカバーディルの声を侮辱しているように思えるのですが、これは私だけの考え過ぎでしょうか。彼の声が大好きな私としては、複雑な気持ちを隠しきれません。
ところで渋谷陽一さんは本当にジミー・ペイジとレッド・ツェッペリンが好きなようで、解説でも熱い思いを語っています。少し引用すると、「ツェッペリン解散後、ジミー・ペイジが初めて自らのツェッペリン時代のノウハウを全て叩きつけたのがこのプロジェクトである。気合いが入っている。これで勝負してやるんだという気迫が十分に伝わって来る」というように大歓迎をしています。その反面「この作品も僕らが期待する水準を十分にクリアしているとは言えない」と、もっとすごいアルバムを作って欲しいと言う願いも語っています。
11曲の作品の中では、2曲目「永遠の女」、4曲目「プライド・アンド・ジョイ」、7曲目「イージー・ダズ・イット」、などがツェッペリンらしさを強く感じる曲でしょうか。これらはやはりロバート・プラントに歌って欲しいような気持ちもしますね。
このアルバムは1993年にソニー・レコードから発売された日本盤のCDです。
1998.10.1