Chunga’s Revenge / Frank Zappa


雑誌「レコード・コレクターズ」の1994年3月号の特集は、「永遠のフランク・ザッパ」、1993年12月4日、癌のために永眠した彼の足跡を称えるための特集でした。アダム・カウフマン、ホッピー神山、湯浅学の各氏による座談会、中村とうようさんによるザッパ評、1992年の9月にドイツのフランクフルトで行われたコンサートを体験した大山甲日さんによる会見記、そして56枚にも及ぶオリジナル・アルバム・ガイド、など詳細なデータを得ることができます。

同誌の「追悼アンケート・私が一番好きなザッパの曲」では、清水勇さんが、このアルバム「チャンガの復讐Chunga’sRevenge」の中の「20本の短い葉巻TwentySmallCigars」をあげています。この曲はアルバム中の3曲目で、2:18という短い曲ですが、ジャズ風の粋なインストゥルメンタル曲です。聴けば聴くほど味がある名曲です。

このアルバムにはライブの雰囲気があります。例えば4曲目「ナンシー&メアリー・ミュージックTheNancy&MaryMusic」は9分27秒とアルバム中で最も長い曲ですが、ドラム・ソロがあったり、ボーカルの遊びがあったり、これは絶対ライブの録音ですね。

1曲目の「トランシルバニア・ブギTransylvaniaBoogie」もインスト曲でライブ的だし、2曲目の「ロード・レディズRoadLadies」も観客の声のようなものが入っています。ただこれはどうやら演出された声のようですが。8曲目の小曲「ザ・クラップTheClap」もライブのようです。

アルバムにはインスト曲とボーカル曲が半分づつ収められています。7曲目のタイトル曲「チャンガの復讐Chunga’sRevenge」ではザッパのギターが私たちに語り掛けてきます。そしてインスト曲ももちろんいいですが、ボーカル曲もとても素晴らしいものです。愛の言葉をぶつける5曲目「テル・ミー・ユー・ラヴ・ミーTellMeYouLoveMe」、コミカルな6曲目「ウッジュ・ゴー・オール・ザ・ウェイ?WouldYouGoAllTheWay?」、ああ、この曲の中には、後にアルバム「シープ・ヤクーティ」(だったと思うけど)にある曲に似たようなモチーフが出てきます。そして労働組合を皮肉った9曲目「ルディーが一杯奢ってやるんだってよRudyWantsToBuyYezADrink」も、いかにもザッパ的だし、最後の10曲目「可愛いシャリーナSharleena」は突然いなくなった彼女のことをせつなく歌った曲です。

いま通勤に車で50分くらいかかっていて、今日も出勤のときにこのアルバムを聴きながら運転していました。ちょうど職場に着こうとしたとき、最後の「シャリーナ」が車の中いっぱいに響き渡り、ああザッパはこのシャリーナのように、この私たちの世界にはいないのだ、と思うと、泪があふれて止まらなくなってしまいました。

このアルバムは、1970年に発表されました。このCDはライコディスクが発売したカナダ盤のCDを、ビデオアーツ・ミュージックが輸入し、歌詞と訳詞、解説を付けて「ライコディスク・フランク・ザッパ・ディスコグラフィー」の第一弾として1994年に国内で販売したものです。

1998.9.2