Macula Transfer / Edgar Froese


タンジェリン・ドリームTangerineDreamのリーダー格、エドガー・フローゼEdgarFroeseのソロ・アルバムです。タンジェリン・ドリームを含めて瞑想系の音楽では、これが私の一番好きなアルバムです。この手の音楽をあまり聴かなくなった今でも、このアルバムはMDに録音したものを時々聴くことがあります。

アルバムには5曲が収められています。「os452」、「af765」、「pa701」、「quantas611」、「if810」と記号のようなタイトルがつけられています。アルバム・タイトルの「macula」は、しみ、アザ、そして太陽の黒点を意味しています。「MaculaTransfer」は、「黒点移動」ということでしょうか。そして記号のようなタイトルは、昔なにかの解説で読んだ覚えがあるのは、高速道路か列車路線の名前、あるいは列車番号、だったような記憶があります。アルバム・ジャケットの内側には、沈みゆく夕日に向かって進む列車の写真が載っています。あ、違う。アルバムの内ジャケットを読むと、「the material was composed during different flights in 75 and 76」と書かれています。そうそう、飛行機の中で作曲されたもので、曲名はそれぞれの飛行機のフライト・ナンバーだったと思います。

アナログ・レコードのアルバムA面にあたる1曲目「os452」と2曲目「af765」、そしてB面にあたる3曲目「pa701」は、いずれもリズミックな曲。しかしそのリズムは、ダンス・ミュージックのような軽快さではなく、クラフトワークのように淡々としたものでもありません。曲全体が大きな波のうねりにあり、そのうねりが小さなリズムで構成されている、というイメージです。4曲目「「quantas611」はリズム感のない荒涼としたイメージの曲。最後の5曲目「if810」は、コード展開の軽快さもあり、リズミックな印象を感じる曲です。

アルバム全体を通して気がつくのは、やはり使われている楽器の主なものはシンセサイザーではないということ。リズムを作っているのは、シーケンサーで操作された電子音ですが、ストリングスとして聞こえるキーボードはメロトロンのようだし、メロディーはエレクトリック・ギターで弾かれたものです。瞑想感をかもしだしているのは、それらをエフェクトしたエコーやリバーブなどの処理によるものです。

アルバムの内側に、「Contact−adress」として、エドガー・フローゼの住所と電話番号が書かれているところが面白いです。また「this album is dedicated to David B.,iggy,corinne,all the nice people of the chateau and the ghost of chopin」と書かれています。デビッド・ボウイやイギー・ポップ、というところが、どうもイメージと違うんですが。

このアルバムは、1976年にブレイン/メトロノーム・レコードBrain/MetronomeRecordsGmbHから発売された、西ドイツ盤のアナログ・レコードです。ジャケットの印刷は光沢があって、とても奇麗です。

1998.8.25