「ランブラーRambler」とは、「ぶらぶら歩く人、漫談する人、曲がりくねるもの、とりとめのないこと」(小学館ブックシェルフより)。まさにこのタイトルがうってつけのアルバムです。デビュー・アルバム「イン・ライン」に次ぐフリゼール2枚目のリーダー作で、その魅力が開花したと言えるアルバムです。
私は最近になってこのアルバムにとりつかれています。不思議な浮遊感とフリゼールの存在感の確かさが絶妙におもしろいアルバムです。特に3曲目のタイトル曲「ランブラー」は、なぜか懐かしく、ノスタルジーを感じさせる曲で、たとえようのない美しさに満ちあふれています。この曲を聴くだけでもこのアルバムの価値があります。
4曲目「ホエン・ウィ・ゴー」も美しいメロディーで心に響く曲。タンゴのリズムでしょうか。5曲目「リジスター」はスイング・ジャズのエッセンスをデフォルメした曲。いつまでもコード進行が解決しないようにさまようテーマが魅力です。フリゼールのギター・シンセサイザーも縦横無尽に駆けめぐります。6曲目「奇妙な出会い」も印象的で美しいメロディーの曲。こうして聴いてみると、フリゼールは素晴らしいメロディー・メーカーであることに気づかされます。
演奏するメンバーは、ビル・フリゼールBillFrisell(Guitar/GuitarSynthesizer)、ケニー・ホイーラーKennyWheeler(Trumpet/Cornet/Fluegelhorn)、ボブ・ステュワートBobStewart(Tuba)、ジェローム・ハリスJeromeHarris(ElectricBass)、ポール・モチアンPaulMotian(Drums)となっています。フリゼールのギターとともに、チューバが使われているところが、このアルバムの浮遊感を高めているように思います。
このアルバムは1985年にECMレコードから発表されました。このCDはポリドール株式会社から1991年に「ECM名盤コレクション2000」というシリーズで発売されたものの一枚で、日本盤です。
1998.8.12