Before We Were Born / Bill Frisell


最近ますますビル・フリゼールが好きになってきました。というか、ようやくその良さがわかり始めてきたのかも知れません。アルバムごとにかなり違う印象を与えてくれるところに最初は捕らえどころがなかったのですが、ようやくアルバム一枚一枚を素直に楽しむことができるようになってきました。

1曲目のタイトル曲「ビフォー・ウィ・ワー・ボーン」は、ひきつるように叫ぶフリゼールのギターが、ジャケット写真の印象そのもののように硬質で広い空間に漂います。ストリングスが音空間を広げ、透明感の中に激しさと躍動、緊張がコンビネーションを保っています。それもそのはずで、この曲と7曲目「ザ・ローン・レンジャー」、8曲目「ステディ,ガール」の演奏は、フリゼールのギターにアート・リンゼイArtoLindsayがギター、ピーター・シェーラーPeterSchererがキーボード、ドラムスはジョーイ・バーロンJoeyBaronというメンバーで、アレンジにもアート・リンゼイとピーター・シェーラーが加わっています。アルバム最後の「ステディ,ガール」ではアート・リンゼイが、アンビシャス・ラバーズでおなじみの彼独特の甘いボーカルを聴かせてくれます。

このアルバムのもう一つの側面は、「サム・ソング・アンド・ダンス」を構成する2曲目「フレディのステップ」から「ラヴ・モーテル」、「ピップ・スクィーク」、「グッドバイ」までの曲で、フリゼールにハンク・ロバーツHankRoberts(Cello)、カーミット・ドリスコルKermitDriscoll(ElectricBass)、ジョーイ・バーロン(Drums)、JuliusHemphill(AltoSaxophone)、BillyDrewes(AltoSaxophone)、DougWieselman(BaritoneSaxophone)というメンバーで演奏されます。これらは大胆にデフォルメしたカントリー・ブルースやバラード、タンゴで、激しいフレーズの中にどこかしら懐かしさを感じる曲たちです。

そして6曲目「ハート・プレインズ・ドリフター」は、フリゼール、ハンク・ロバーツ、カーミット・ドリスコル、ジョーイ・バーロンのカルテットで演奏されます。アレンジはジョン・ゾーンJohnZone。多くの曲の断片で構成される、ジョン・ゾーン得意のコラージュ風の曲です。

ところでこのCD、ケースから出してビニールの袋に入れて持ち運びをしていたために、反射面に細かな傷がついて音飛びがするようになってしまいました。快適に聴くにはもう一枚買わなきゃならないかなあ。傷取りのクリーナーみたいなものを使ってみようか、などと思っているところです。やはり大切なCDは丁寧に扱わなければならないと、反省反省。

このアルバムは1989年にエレクトラ/アサイラム/ノンサッチ・レコードElektra/Asylum/NonesuchRecordsから発売されたもので、米盤を輸入しワーナー・パイオニアが解説を付けて日本国内で販売したもののようです。

1998.8.10