天下の名作「狂気DarkSideOfTheMoon」に次ぐ、9作目のアルバムです。前作から2年半という長い沈黙の後に発表されたアルバムとしては、評判は決して良くなかったようです。それはあまりにも完成度の高い作品を作ってしまったピンク・フロイドの宿命だったように思います。
株式会社ミュージック・マガジン社から発売された、雑誌「レコード・コレクターズ増刊−ブリティッシュ・ロックVol.2」には、小山哲人さんがこのアルバム紹介を書いていて、「アルバムの反響は一様に芳しくなかったのである。(中略)ところで、ぼくらは一体何をフロイドに求めていたのか。本作が発表される前、流れていた噂に『次のアルバムは楽器を一切使用しない』というのがある。実際に74年秋頃、彼らはスタジオで輪ゴムやビンを使ってレコーディングを試みていたらしい。(中略)このエピソードは当時のプログレッシヴ・ロック(・ファン)の<前衛>幻想がどのようなものだったかをよく表しているだろう」と分析されています。
また同書で小野島大さんは「内なる狂気を暴くシリアスな表現者集団」という文章の中で、「『狂ったダイアモンド』の録音中、シド・バレットがふらりとスタジオにあらわれた。なにか自分にできることがあったら言ってくれ、とメンバーに告げた。往年の美青年ぶりは影もなく、惨めに太り、頭も薄くなった虚ろな目をした中年男を見て、ロジャーは泣いた。彼はその姿に自分自身を投影したのだろう」というエピソードを紹介しています。
このアルバムは1975年にハーベストHarvestから発表されました。いまライセンスはピンク・フロイド・ミュージックPinkFloydMusicLimitedにあるようです。このCDはCBSソニー・ジャパンから発売された日本盤です。
1998.8.8