Black Sea / XTC


このアルバムも学生時代に聴きまくっていたので、今回新たにCDを購入して聴き直すと、全ての曲が耳になじんでいるんだけど、なんだか新鮮な気持ちになることができました。もちろん愛聴盤です。

XTCでいちばん好きなアルバムは、前にも書きましたが「ドラムス・アンド・ワイアーズ」です。これは私自身がロックを聴き始めた頃に耳にしたこともあって、生涯忘れられないアルバムです。このアルバムは、その次に好きなアルバム、となりますか。

ビートは「ドラムス・アンド・ワイアーズ」より格段に重くなっています。冒頭、「レスペクタブル・ストリート」は立派な家並みの高級住宅街に住む金持ちを皮肉った歌。「ジェネラル・アンド・メジャーズ」は軍人を皮肉った歌。「リビング・スルー・アナザー・キューバ」は、革命で社会主義国となったキューバと、そこに住む人たち、政治体制の違いって庶民にとっては何だろう、というようなことを歌ったもの。歌詞の中で1961年が革命の年と歌われるけれど、それは私が生まれた年。そして「TheirDueForReplay,1998(1998年には同じことが繰り返される)」と歌われるのは、まさにこの年。なんだか僕にとっては啓示を受けるような曲です。

ちょっとスローな「ラブ・アット・ファースト・サイト」は、一目惚れを皮肉った歌。ほんとうにXTCの連中は、皮肉ってばかりだな(^_^;)、と思うと、次の「ロケット・フロム・ア・ボトル」は実に素直な恋の曲。でもこれだけ皮肉を込めた歌が続くと、素直に共感していいのかどうか迷ってしまいます。「ノー・ラングエイジ・イン・アワ・ラングス」は、言葉で伝えることの難しさを歌った曲。これもスローなバラード風の曲です。

そして次に3曲ほど、オリジナルのアルバムには未収録の、「SmokelessZone」、「Don’tLoseYourTemper」、「TheSomnambulist」が収められています。悪いけどやはり完成度はいまいちで、このようなトラックを聴くことができるのはファンにとっては嬉しいことなんですけど、オリジナルに含まれなかったことは正解のように思えます。

「タワーズ・オブ・ロンドン」はポップな感覚満点の軽快な曲。「ペイパー・アンド・アイアン」は、お金と物の価値のことを歌っています。「バーニング・ウィズ・オプティミズムス・フレイムス」は、楽観主義を称えた歌。でも素直に受け取っていいのかという疑問は残ります。「サージェント・ロック」は、名曲といわれる曲らしいです。僕はXTCはもっと破天荒な曲の方が好きですけど。確かにいい曲ではありますけど。最後の「トラヴェルズ・イン・ニヒロン」は哲学的な香りを感じます。文化とは、人類とは、神とはなんだろう、そんなことを歌っています。

このアルバムは1980年に発表されました。このCDは「クール・プライス」として1,750円という廉価盤で東芝EMIから1995年に発売された日本盤のCDです。

1998.7.9