Hatfield And The North / HATFIELD AND THE NORTH


ハットフィールド・アンド・ザ・ノースHatfieldAndTheNorthは1972年から1975年までという短い期間しか活動せず、2枚のアルバムしか残さなかったグループですが、カンタベリー・ロックといわれる音楽に大きな影響を与えたようです。残した作品の一枚はこのアルバムで、もう一枚は「ロッターズ・クラブTheRottersClub」というアルバムで、こちらの方が有名だとのことです。これは学生時代に聴いたことはありますが、アルバムは持っていません。いつか手に入れて紹介したいものです。タイトル曲の「ロッターズ・クラブ」のリフをよく覚えています。

さてこのアルバムを作ったのは、リチャード・シンクレアRichardSinclair(Bass,Singing)、フィル・ミラーPhilMiller(Guitars)、ピプ・パイルPipPyle(Drums)、デイブ・ステュワートDaveStewartの4人と、ロバート・ワイアットRobertWyattら何人かのゲスト・ミュージシャンたちです。リチャード・シンクレアはキャラバンCaravanに参加していたミュージシャン。ピプ・パイルとフィル・ミラーは「デリバリーDelivery」というグループに在籍していました。デイブ・ステュワートはモント・キャンベルMontCambell、クライブ・ブルックスCliveBrooks、そしてスティーブ・ヒレッジSteveHillageとともに「ユリエルUriel」で活動し、このグループはエッグEggへ発展します。私の大好きなキーボード奏者です。でも残念ながら、というか、このハットフィールドではエレクトリック・ピアノを多用し、彼の個性的なオルガン・プレイはあまり聴かれません。

4曲目の「ケリックスCalyx」でロバート・ワイアットが天に届くようなスキャットを聴かせてくれます。また「TheNorthettes」というクレジットで3人の女性がクレジットされていますが、そのうちの一人はバーバラ・ガスキンBarbaraGaskinとあり、後にデイブ・ステュワートと一緒に「バーバラ・アンド・ガスキン」で活動する女性と思われます。

A面は曲間がほとんどなくシームレスにつながる組曲風の展開です。7曲目、A面最後の「リフRifferama」はカンタベリー派独特の4分の3拍子。そして熱く盛り上がる演奏に、まるで小野洋子のような叫び声が重なって終わります。ここまでのトータル・タイムは20分57秒とクレジットされており、当時のアルバムとしては長いものです。

A面前半のクールな演奏に比べ、B面はA面最後を引きついだ熱い演奏を聴くことができます。また「髭剃りは退屈ShavingIsBoring」「エビの受精卵の試みLobsterInCleavageProbe」「巨大な大地の沢蟹の申し出GiganticLand−crabsInEarthTakeoverBid」などは、まるでエリック・サティのピアの曲のようなユニークなタイトルです。

アルバムの内ジャケットには車椅子に座ったロバート・ワイアットの写真が載っています。また脇にはカウボーイ・ハットをかぶったアメリカ西部の男たちが描かれています。どういう意味なんでしょうね。

このアルバムは1973年にManorStudiosで録音され、1974年に発表されました。このアナログ・レコードは1982年にビクター音楽産業株式会社から発売された日本盤です。

1998.5.26