Octet ・ Music For A Large Ensemble ・ Violin Phase / Steve Reich
「大アンサンブルのための音楽MusicForALargeEnsemble」は「18人の音楽家のための音楽」を発展させた作品といえます。しかし「漸次的変移プロセス」はリズムを大きく意識したものとなり、曲の印象を大きく変えています。ライヒを知らない人にも聴きやすく楽しめるのではないでしょうか。
解説の近藤譲さんによれば、「大アンサンブルのための音楽」はオランダ・フェスティバルからの委嘱作品で、1978年12月に完成、翌1979年の6月の同音楽祭で、ラインベルト・デ・レーウ指揮のネザーランド管楽アンサンブルによって初演されたとのことです。マリンバ×4、シロフォン×2、ビブラフォン、ピアノ×4、ボイス×2、バイオリン×2、ビオラ×2、チェロ×2、ベース(コントラバスのことでしょうか)×2、クラリネット×2、フルート、ソプラノサックス×2、トランペット×4と、総勢30名による演奏です。シロフォン奏者に、ロック・ミュージシャンとの親交もあるデビッド・バン・ティーゲムDavidVanTieghemが加わっており、ライヒ自身もピアノを演奏しています。
「バイオリン・フェイズ」は4本のバイオリンで演奏されることも許されていますが、このCDではすでに録音された3本のバイオリンに、一人のバイオリニストが演奏を加えていくという方法がとられています。録音された3本のバイオリンは「漸次的変移プロセス」によって奏者の意識的なコントロールを排して重なり合いますが、これに演奏を加える一人のバイオリニストは、重なる音の旋律を聴きとり、新しい旋律を能動的に加えるという手法で演奏を行っています。
「8重奏曲Octet」はピアノ×2、クラリネット、バスクラリネット、フルート、ピッコロ×2、バイオリン×2、ビオラ、チェロ、という8種類の楽器、11名の奏者による作品です。曲想としては「大アンサンブルのための音楽」と似ていて、リズムを意識した躍動感のある曲になっています。簡単なものから次第に複雑になってゆく旋律の面白さが表現されています。聴き手にとってみれば、実験的作品から楽しめる音楽への転換期にあたる作品といえるのではないでしょうか。1988年に作られることとなる「DifferentTrains」の予感も感じる曲です。
ライヒを始めて聴こうという人におすすめのCDです。解説は近藤譲さん。1980年にECMレコードECMRecordsから発表されました。このCDはポリドール株式会社から同年に発売された日本盤のCDです。
1998.4.10