<第1回>

2003/02/20

教科「情報」とアルゴリズム

兵庫県立明石高等学校 松本吉生

ymatsumoto@hyogo-c.ed.jp

 
 
もはや日常のものとなった「情報活用」
   
 

前の教育課程においても、高等学校におけるコンピュータの活用が必要と言われ、普通科教育の中では「情報処理」という科目として取り扱われてきました。この「情報処理」は、本来「商業」科の中にある科目で、そこでは「文書処理(ワープロ)」「表計算」「プログラミング(BASIC)」という3つの柱がありました。

ところが新しい教育課程においては、主としてインターネットを学習に活用するという面が強調され、コンピュータの仕組みやプログラムの内部仕様などは教えなくてもよい、という考え方になってきました。そのため、ワープロや表計算ソフトを使いこなすことは教育の目的でなくなり、プログラミングなどできなくてもよい、と言われるようになりました。

確かに学習指導要領の中身を議論された時期では、まだまだ日本ではコンピュータやインターネットが一般の人に知られてなく、まずは「使えるようにならなけらばならない」という至上命題があったという背景があります。そしてまたコンピュータを使える教員がほとんどいないという状況で、教員に対する啓蒙という側面もあったのです。

しかし昨今はコンピュータを自宅で持つということが珍しくなく、書店にはパソコン関係の雑誌や書籍があふれ、ADSLなどの実用的で早い接続サービスを安価に使えるようになりました。さらには携帯電話で電子メールを使ったりWebさえ見えるという時代です。つまり、普通の人がコンピュータやインターネットを使いこなすということが、もはや当たり前になった、と言っていいでしょう。

 
「情報の科学的理解」こそが大切
   
 

教科「情報」では学習の目標として「情報活用能力を育成する」「情報の科学的理解をさせる」「情報社会に参画する態度を養う」の3つを掲げています。しかし先に述べたように「情報活用能力」というものは、もはや家庭教育や小中学校教育で達成されつつある、ということ、また「情報社会に参画する態度」というものは、どちらかといえば道徳に近いものであり、教科の授業内容としては相応しくないのではないか、というのが筆者の見方です。

また本来教育というものは、様々な教科の内容を取り扱いながら、結局のところ科学的なものの見方を養い、社会の発展に寄与する人材を育成することが最も大きな目標ではないかと思います。そういう意味で、コンピュータやインターネットを教材として扱い、情報として見えているものの実態に迫り、「科学的な理解」を深める教育こそ必要ではないかと思います。

 
学習のツールとしてのライブモーション
   
 

「情報の科学的理解」を深めるひとつの方向として、アルゴリズムを理解させることがあります。これは学習指導要領にも「情報B」の内容として「コンピュータの仕組み,コンピュータ内部での基本的な処理の仕組み及び簡単なアルゴリズムを理解させる。」と記述されています。では実際に授業でアルゴリズムをどう教えればよいのでしょうか。

教科書では「流れ図」を取り扱うものがことになるでしょう。しかし体験的に理解できない学習では意味がありません。教科書の中には表計算ソフトのマクロ機能を利用した実習を取り上げているものがあります。しかし自分でマクロを組んで表の中でセルの数値が変化することを体験しても、日常的に使っているアプリケーションやインターネットとの乖離が大きく、実感が伴いません。

ライブモーションを使うと、Webページとしてブラウザで操作できるファイルが生成されます。つまりライブモーションで絵を描いたりスクリプトを記述するという行為は、実質的にWebアプリケーションをプログラミングして作ったことになります。そしてライブモーションのスクリプト言語はオブジェクト指向であり、将来の発展的な学習につながります。作品は視覚的にわかりやすく、インタラクティブな仕掛けも簡単に作れます。

 
生徒の興味を惹いたスクリプトの授業
   
 

明石高校では平成12年から「マルチメディアデザイン」という授業で、Webアニメーションの制作を通じてコンピュータやインターネットを理解し、創作力を養うということを行ってきました。この3年間を通じて、生徒が最も興味を持って取り組んだのがライブモーションを使ったスクリプトの授業でした。

私は最初、授業でスクリプトを取り上げるのは難しいのではないか、と思っていました。しかし実際に授業でやってみると、こちらが驚くほど生徒の理解が早く、用意した教材が次々と消化されていく、という状態でした。これはライブモーションのスクリプト体系がわかりやすく整理されているということと、スクリプトエディタの機能が充実しているということ、そして何よりもインタラクティブな作品を作ることは楽しくて充実感がある、ということです。

 
このページの目的
   
 

このページは、ライブモーションを使ったことのない先生を対象に、基本的な描画の方法とスクリプトの記述を説明します。そして授業で得られた経験から、教材となるスクリプトを紹介します。このことが教科「情報」を担当する先生方の何らかのヒントになれば幸いと思います。

わからないことがあれば、どんどんメールをください。また情報交換のできる場(メーリングリストや掲示板)を作ることも計画しています。

なお、このページでは、特に断りのない限り、アドビのライブモーション2.0を使って説明をしています。

     
 

このページを見て「スクリプトの勉強をしよう」と思われたら、ぜひメールをください。わからないところがあったら、質問もおっけーです。お待ちしています。

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