<第1回>

校務の合理化にInfoPathを使う

兵庫県立西宮香風高等学校 松本吉生

ymatsumoto@hyogo-c.ed.jp

 
 
 
オフィスワークを増加させる情報化
   
  校務の情報化には様々な側面がある。業務を合理化し負担を軽減すること、業務の正確さを保証し質を高めること、情報化によって以前は不可能であったことが可能となること、などである。多くの人が期待するものが最初の点であるが、これが実は最も遅れている点である。後の2点は、いずれも業務を増やすことにつながるので、結果的に情報化はオフィスワークを増加させているのが現状である。
   
なぜ校務の合理化がすすまないか
   
 

校務の合理化が進まない背景はいくつもあるが、そのひとつにコンピュータによるデータ処理には、情報の「前処理」の手間がかかる、ということがある。例えば生徒に対してアンケートを行い、その結果を分析しなければならないとしよう。この業務には具体的にどのような内容の仕事があるだろうか。

まずアンケートを実施して何を明らかにするのかという目的を設定しなければならない。そして最終的に整理して得たいデータの具体的な形を決め、アンケートの項目を設定する。次に実施するアンケート対象者を決め、通常は印刷物で対象者へ配布し回収する。回収されたアンケート用紙を見ながら回答データをコンピュータに入力し、最後にデータを分析する、という流れになるだろう。

この業務の流れにおいて、コンピュータが活躍するのは最後に行うデータ処理の「一瞬」だけである。ところが「コンピュータでやる仕事だから」と、アンケートの実施全体を情報担当者にまるなげされることが多いのではないだろうか。情報担当者も、変な項目設定で後の処理に困るのは嫌だから、最初から口を挟んだり自ら請け負ったりしてしまうこともあるだろう。

   
情報のインプットとアウトプットの直結
   
 

アンケートの例では、アンケートの内容を決めたり対象者を設定するなどの創造的な部分をコンピュータにまかせたり軽減することはできないが、決定したアンケート内容を対象者に配布し、回答を得、データを集計するという流れにおいては合理化することができる。このときのキーワードは「インプットとアウトプットの直結」である。

回答を紙に書かせて、それを手作業でコンピュータにデータ入力するから手間が生じ、ヒューマンエラーによってデータの信頼性は落ち、それをカバーするための点検という余計な手間が必要になるのだ。データ入力の作業を代替するものとして、OCRカードに回答させてリーダーで読むということも考えられるが、リーダーの読み取り精度が悪ければデータの信頼性が低くなることは避けられないし、読み込まれたデータを確認する作業が面倒である。回答者がマークミスをするケースも多いだろう。

最も望ましいのは、印刷物と同様の見やすいレイアウトで構成されたコンピュータ上のフォームに回答者がリストから選択したりチェックマークを入れたりしてデータ入力し、それがそのままデータベースに格納されるという形である。これをやろうと思えば(1)プログラミングでクライアントアプリケーションを作る(2)アクセスでデータベースを作る(3)Webアプリケーションを作る、といった方法があるが、これに加えて(4)InfoPathでデータ入力フォームを作る、という選択肢ができた。InfoPathによるフォーム作成は簡単で、一行もコードを書くことなく、ユーザにわかりやすい入力画面を作ることができる。

   
InfoPathとXML
   
 

InfoPathはXMLベースのデータベースアプリケーションである。書店でコンピュータ関係の配架へいくと、XMLに関する解説書、技術書があふれている。どうやらデータベースはXMLの時代らしい。しかし、XMLとは何だろう。本当にXMLは必要なのだろうか。私はXMLを詳しく知っている訳ではないし、そのすべてを知っておく必要もないと考えている。だが便利なものなら、使えたほうが良いに決まっている。便利なものだから流行っている、ということもできる。私は個人レベルのデスクワークにおいては、次のようなメリットがあると考えている。

1.データの定義が決まっている

たとえば「651-1122」といったデータがあったとしよう。これが「電話番号」の場合と「郵便番号」の場合とでは、違った内容を示すことになる。表計算ソフトでは住所録を作る場合に「項目名」を最初の行に書くことが通例だが、データをコピーしたり列を入れ替えたりしたときに、列がずれたりすることがあるため、前述のようなデータでは混乱が生じる場合がある。しかしXMLのデータはデータの「項目名」に相当する定義が決まっているので、このような間違いは心配しなくて良い。

2.テキストファイルである

XMLデータはテキスト形式で保存される。したがって特定のアプリケーションに依存することなく、汎用性がある。現在ほとんどのデータ関連アプリケーションがXMLに対応しているし、今後も普及は促進されるだろう。

上記の2点を念頭に置きながら、アンケート集計にInfoPathを使ってみよう。XMLについての理解が足らなくともInfoPathのフォームを作りデータ集計をすることはできるので、難しく考えずに、とにかくやってみることを薦める。

なお、このページでは、特に断りのない限り、Excel2003 と Info Path 2003、を使って説明している。Excelの旧バージョンはXMLの対応が完全ではないので、同様の結果が得られないことをあらかじめ断っておく。筆者のメールアドレスはymatsumoto@hyogo-c.ed.jpだ。

       
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matsumotoyshio.com 2004/07/09