Bright Red / Laurie Anderson


とても静かなアルバムだ。しかし単なるバックグランド・ミュージックにはなり得ない。静かな中にも確かな自己表現がある。この静けさはブライアン・イーノの環境音楽へのアプローチに似ている。エリック・サティが使った「家具の音楽」という言葉もふさわしい。

参加ミュージシャンの顔ぶれを見ると、このアルバムの存在感もうかがえるだろう。アルバムに収められたのは14曲だが、前半7曲に「BrightRed」、後半7曲に「Tightrope」という名前が付けられている。もしかしたら2枚のアルバムを合わせたものか、とも思われるが、内容的には全体を通じてトータルなイメージが整っている。主なメンバーはローリー・アンダーソンLaurieAnderson(Vocals,Keybords)、CyroBaptista(Percussion)、ジョーイ・バーロンJoeyBaron(Drums)、ブライアン・イーノBrianEno(Keybords,Treatments)、グレッグ・コーエンGregCohen(Bass)、GuyKlucevsek(Accordion)といったところだ。そして曲によってPhilBallou(Back−upVocals)、BenFenner(Bass)、GerryLeonard(Guitar)、JamieWest−Oram(Guitar)、NeilCohen(Shaker)、DougieBowne(Drums)、KevinKillen(Treatments)、マーク・リボットMarcRibot(Guitar)、ピーター・シェーラーPeterScherer(Keybords)が参加している。

ジョーイ・バーロンは「ネイキッド・シティ」などのジョン・ゾーン関連のアルバムでアグレッシブなプレイを見せているが、このアルバムでは控えめなリズム・キープに始終している。マーク・リボットはフレッド・フリスとの共作アルバム「Subsonic1」でプレイを聴いたことがある。またピーター・シェーラーは「アンビシャス・ラバーズ」でアート・リンゼイと共に活動したことで有名。

この他にルー・リードLouReedが11曲目「InOurSleep」でヴォーカルとギターを披露している。またアート・リンゼイArtoLindsayが2曲目のタイトル曲「BrightRed」でボーカルを、エイドリアン・ブリューAdrianBelewが6曲目「Freefall」と8曲目「BeautifulPeaGreenBoat」、10曲目「Poison」、13曲目「Tightrope」でギターを弾いている。なおローリー・アンダーソンは4曲目の「SpeekMyLanguage」でバイオリンを、8曲目の「BeautifulPeaGreenBoat」でパーカッションを演奏している。

全体的にサウンドスケープ的な作りの音の中にローリー・アンダーソンの語りかける詩の朗読が浮かぶ、という曲が並ぶが、その中でも楽曲として印象深いのは「Freefall」と、ルー・リードが関わる「InOurSleep」だろう。それにしても多彩なミュージシャンを集めたものだ。それでいて全体の印象は散漫にならず、ローリー・アンダーソンの世界にまとめあげている。プロデューサーはブライアン・イーノで、Co−Producerとしてローリー・アンダーソン自身の名前がクレジットされている。エンジニアとミックスはKevinKillen、ミュージック・ディレクターはGregCohenの名前がある。

このアルバムは1994年に発表された。これはWarnerBros.RecordsInc.から発売された米盤のCDだ。


2001.8.2