今日はリップ・リグの「アイ・アム・コールド」を紹介しようと思ったが、どうもアルバムが見つからない。整理が悪いとこういうとき困るなあ。仕方ないから、という訳でもないが、ポップ・グループが分離してできたもう一つのバンド、ピッグ・バッグのアルバムを紹介する。
ピッグ・バッグは元ポップ・グループのベーシスト、サイモン・アンダーウッドが始めたグループ。レコード・ライナー(著者不明)によると、友人のオリー・モーア(サックス・クラリネット)とジャム・セッションを行っていたが、そこに若いミュージシャンのグループがデモ・テープを持ってやってきて、自然発生的にバンドの形が整ったという。まさに理想的なバンドの形態だ。
「バンドなんて作ろうと思ったことはない。ずっと長い間ただ人に会うためにプレイしていたのかも知れない。本当にプレイするのが好きだったら、他の人と一緒にプレイしたいと思うのは当然だけれど、その人に会うのに2年かかるか10年かかるかは、わからなかった。ただひたすら待っていた。一緒にやれる連中に会える日を。それは今でも続いているし、これからもいろいろな人に出会い一緒にプレイすることになるだろうね」
ライナーに紹介されたこの言葉は、おそらくリーダーのサイモン・アンダーウッドのものだろうが、これだけ自信を持って音楽をやっていける彼らが羨ましい。まさに生きることと音楽をすることが一体となったかのような言葉だ。
肝心のサウンドは、硬質なファンク・ミュージックで、きちんと構成された様式美に満ちたもの。リップ・リグ・アンド・パニックが各メンバーの自由奔放なソロ・プレイを重視し、時にはアバンギャルドで混沌とした展開を見せるのと好対照だ。ベースがしっかりとリズムをキープし、曲全体のイメージを形作っているところなど、リーダーシップの現われかと思う。リップ・リグの方がファンク色が強くてグルーヴ感が強く、ピッグ・バッグはジャズ色が強いかな。リップ・リグのダイナミック感に惚れた人には、もしかしたらピッグ・バッグは物足りないかも知れない。俺がそうだった。学生当時、バンドのドラマーだったGさんはピッグ・バッグを好んだが、俺はリップ・リグのほうが好きだった。今でもやっぱり、そうだなあ。
このアルバムは1982年に発表されました。ラフ・トレードから発売された、日本盤のアナログ・レコード。と、実はもう一枚あって、こちらもラフ・トレードから発売された輸入盤なんだが、どこで作られたか書かれていない。
1999.6.30