God / RIP RIG + PANIC


リップ・リグ・アンド・パニックの実質的ファースト・アルバム。大きさはアルバムサイズですが、回転数が45rpmのマキシ・シングル2枚組。当時、歯切れのいい音の良さを追求すると45rpmがいい、という流行があって、ニュー・ウェーヴ系のアーティストは盛んにミニ・アルバムを作っていました。このアルバムのその流行からできた形です。2枚のレコード各面は、「RedSide」「GreenSide」「YelloSide」「BlueSide」と名づけられていて、レーベルもその色に塗られています。「RedSide」に4曲、「GreenSide」に3曲、「YelloSide」に4曲「BlueSide」に4曲の合計15曲。長い曲は5分以上ありますが、1分少々という短いものも何曲かあって、実験的な色彩が濃いですが、どの曲もアイデアにあふれていて楽しめます。

私はAttitudeの高い完成度が好きなのですが、改めて聴いてみると、実験的でわかりにくいところが、逆にこのアルバムの魅力に感じます。リップ・リグの典型的な魅力はファンキーな曲にあります。A−1(1曲目)では各メンバーの自由奔放なソロ・プレイが、まるでオーネット・コールマンのハーモロディック理論に基づいているかのよう。B−5(5曲目)、B−4(8曲目)などは、細かく刻まれたリズムの中にフリーキーな演奏がファンキーに展開。またシリアスな曲ばかりではなく、B−2(6曲目)のように、ユーモアにあふれた曲もあります。またB−3(7曲目)は、海底深くでうごめく生き物の鼓動、とでも表現できるような音が流れて変な印象も受けますが、よく聴き込むと、とってもせつないブルースです。とっても変だけれども泣かせる味がある、ってかんじかな。

このように決してバックグランド・ミュージックにはなり得ない、存在感のある音楽が満ちあふれています。曲名も意味深で、「単調な仕事は魂、精神、健康にも害を及ぼす」「陽があるから陰ができる」「エスキモーの女はフランクに話す」など。そういえばエリック・サティのピアの曲のタイトルが、こんなかんじだったな、と思い出します。

このアルバムでは正式メンバーではないようですが、何曲かでネネ・チェリーのボーカルが聴けます。後にフロート・アップ・CPというグループを結成したり、ソロになってからのボーカルはあまり好きではありませんが、リップ・リグでのネネ・チェリーは大好きです。若さの魅力かも知れませんが、とってもピュアに感じます。

そうそう、気のついたことをもう一つ。これは昨日も書こうと思ったことですが、リップ・リグは、ピアノの音色が古臭くて特徴的です。それがよくわかるのはA−3(3曲目)。わらーんと響く音で、レトロな感じを受けます。ピアノの中にローファイのマイクをごろんと投げ入れて、イコライジングもせずに録った、という感じ。

このアルバムは1982年に発表されました。日本コロムビア株式会社から発売された、日本盤のアナログ・レコードです。っと、棚をよく調べたら、もう一枚ありました。こっちは英盤でVirginRecordのもの。1981年と書かれています。ジャケットや内容は同じでした。では明日もまたリップ・リグのアルバムを紹介することにしましょう。

1999.6.28