An American Prayer / Jim Morrison


伝説のロック・バンド「ドアーズDoors」は、私は全く知りません。これは音楽的教養に欠けると言われても仕方のないところです。このアルバムも、今日はじめて聴きました。まるでジム・モリソンJimMorrisonは宣教師のよう。現代のキリストともいうべき言葉をかけてきます。しかしその言葉は呪術的で退廃的。学生時代の私ならきっと夢中になったことでしょうが、今の私には心に響くものではありません。もちろん当時の若者が熱狂的に支持したことは想像に難くないところです。

アルバム全体がジム・モリソンの「説教」かのようです。1曲目「目ざめよAwake」から20曲目「友人同士の宴AFeastOfFriends」まで、ドラマのようにアルバムは流れてゆきます。コンセプトは全然違いますが、ピンク・フロイドPinkFloydの「ウォール」か「ウマグマ」のようなイメージです。しかし効果音や環境音を巧みに取り入れた緻密な構成は、疑り深い私にはむしろ作為を感じます。ジム・モリソンはこのアルバムで、若者たちをどう導くつもりだったのか。私の聴き方が浅いのかも知れませんが、私にはわかりません。

と考えながらCDの解説を読むと、ジム・モリソンは1971年7月3日に死んだこと、そして「このアルバムでは、ジム・モリソンの詩の朗読は1970年で、バックのドアーズの演奏は1978年なのである」ということが書かれていました。ジム・モリソンが死んだ8年後、残された朗読テープをもとに他の者の手でアルバムが作られる。ジム・モリソン自身にとって、私たちにとって、このアルバムはどういう意味があるのか。とても複雑な気持ちです。

このアルバムは1978年に発表されました。このCDはオリジナル・アルバムに3曲のボーナス・トラックを加えて、株式会社ワーナー・ミュージック・ジャパンから1995年に発売されたものです。朗読の訳詞が全部書かれています。

1999.2.25