BGM / YMO


愛用のレコード・プレーヤーYAMAHA―P750のREPEATスイッチを押し込み、何度も繰り返し聴いた。こんなに奥深いサウンドだとは忘れてしまっていた。リズムは複雑。音は余韻なく短く途切れてソリッドなイメージ。ある程度大きな音で聴かなければわからないが、音数は少ないのだが存在感があり、圧倒的なヴォリュームで迫ってくる。それは一つ一つの音が細心の注意を払って演出されているからだ。真剣に聴けばBGMというタイトルは逆説的だが、小さな音で生活空間に流し込めば、それはそれでただ軽やかに控えめに鳴っているからそれはそれでまたおもしろい。

「バレエ」はボーカルが主体のポップ名曲。「音楽の計画」はリズムマシーンの厳格なリズムとシーケンサーでコントロール(おそらく)された完璧なベースに、強くフランジングされたストリングスが不安定であいまいなメロディーを奏でる。まるで制服を着た軍人の整列する前で、ピエロがおどけて見せるような不釣合いの面白さを感じる。「ラップ現象」はケチャのリズムのように細かなラップが行われる。バックにはレジデンツ風のローファイな音が流れてくる。真面目くさった強烈なユーモア。だがこのモチーフはゴドレー&クレームの「スナック・アタック」だぞ?!

「ハッピーエンド」はアバンギャルドに激しく捻じ曲げられたポップソング。最初のテイクは素直で奇麗な歌ものだったのではないかと想像。「キュー」はYMO独特のポップソング。「ユーティー」はYMOの名曲への賛歌。とてもかっこいい。

最後の「来るべきもの」の直前では、小さい水の滴る音がひそやかに鳴っている。そして無の中から沸き起こる数々の音が次第に大きく高くなり、一つに向かって伸びてゆく。そして美しい宇宙的なハーモニー。人工的な荘厳さ。ショッピング・ウィンドーのような見え透いたしらじらしい美しさ。これはシリアス・ミュージックに対する強烈な批判だ。

このアルバムは1981年にアルファ・レコードから発売された日本盤のアナログ・レコード。ジャケット裏には録音機材申請書というようなものが書かれていて、総額5,125万円の予算が計上されている。「OMIYAGE」という本のチラシが入っていたりして、当時のYMOの人気がうかがえる。

1998.12.30