The Yellow Shark / Frank Zappa


9月14日の朝日新聞に、アンサンブル・モデルンが初来日したとの記事が載りました。9月5日に行われた公演では、ナンカロウという音楽家の作品とスティーブ・ライヒの「エイト・ラインズ」とともに、フランク・ザッパのこの「イエロー・シャーク」が演奏されたとありました。

1993年12月4日、フランク・ザッパはこの世を去りました。この偉大なミュージシャンについては、様々な思いがあるゆえに、そのパーソナリティーには関心を抱かざるを得ません。おそらくファンにとっては重要事であるさまざまな事柄が、インターネットでも語りつくされていることでしょう。しかし私には死の直接の原因であるとか、齢いくつで生涯を閉じたとか、今となってはどうでもいいことに思えます。

このアルバムは、生前に発表された最後のアルバムで、ジャケットの写真に驚いたファンも多かったことでしょう。精力絶倫で音楽活動をしていたはずのザッパが、いきなり年老いた老人のごとく姿をあらわしたからです。しかしジャケット内の写真では、おそらくアルバム作成に携わったであろう4人の男に囲まれて、片肘をつき満足そうに微笑むザッパがいます。

この内ジャケットの写真を見ると。私は最初に抱いた印象。年老い、あるいは病に侵され、未来を失った空虚な顔、と思ったザッパ。が。「俺の人生はこうだが、お前はどうだね?」と問い掛けているように見えてきました。

俺はこう生きた。お前はどうだ。


そんなふうに問い掛けられることは、たいへん恐ろしいことです。今日。このとき。こう問われて、私は満足のいく答えができるだろうか。このアルバムを手にするとき、私はザッパに語り掛けられているように思います。

このアルバムは1993年に発表されました。どの会社から発売されたか、どこの国で作られたか、このアルバムに関しては、そんなことは何の意味もないでしょう。

1998.11.11