Hell / James Brown


これは「グッド・フット」に比べてもずいぶん強力になっています。リズムが強い。そして現在のソウル・ファンク・ミュージックに通じるあらゆるタイプの曲が詰め込まれていると思えるアルバムです。これを聴けばマイケル・ジャクソンやプリンスは、まるでコピー・バンドのように思えるほどです。

このアルバムが力強いのは、アルバム全体が当時の黒人差別に抗議するメッセージを持っているためでもあるかも知れません。解説を書かれているDonKatsumotoさんはソウル・ミュージックの魅力に取り付かれ、全国ソウル・ディスコ協会を設立して普及に努めたという人で、ジェイムズ・ブラウンへの熱い思いを語っています。

DonKatsumotoさんは1973年に初めてジェイムズ・ブラウンと出会ったそうです。当時のアメリカは黒人差別が横行し、ジェイムズ・ブラウンは「俺を全米では知らない者がいない位に有名になったが、テレビ番組にはなかなか出られない」と語ったそうです。テレビは白人のメディアであり、その白人のメディアに黒人はなかなか受け入れられない辛さがあったようです。そして彼は「だから俺は世界の黒人の為に戦っているんだ」と語ったといいます。

アナログ・レコードでは内ジャケットであっただろう写真は、丈が短めの黒のジャケットに黒のスリムなズボンをはき胸を張り超然と立つジェイムズ・ブラウンの写真であり、自信に満ちた姿はとてもたくましく感じ、音楽の偉大さとシンクロするデザインです。

このアルバムは1974年にLP2枚組みのダブル・アルバムとして発表されました。このCDはデジタル・リマスターされたもので、1995年にポリドール株式会社から「ジェイムズ・ブラウン・ナイス・プライス・シリーズ」として発売された日本盤です。

1998.9.24