Another Fine Tune You’ve Got Me Into / GILGAMESH


「ギルガメシュ」は伝説上のシュメール人の王で、シュメールとバビロニアの叙事詩の主人公。シュメールはイラクの南部で最古の文明の発祥地といわれているところです(小学館・マイクロソフト・ブックシェルフより)。ジャケットにデザインされたのはこの伝説上の人物でしょうか。

裏ジャケットにはアラン・ゴウエンによる簡単なアルバムの解説が書かれています。引用してみます。



The music on this album was written during 77-78 - some of it when I didn't know who was going to be in the band apart from Phil and some after Hugh and Trevor had joined. I always like to write for specific musicians as their playing is all important in shaping the style of a group. Writing in a vacuum has never appealed to me. I also write for the instruments available, in my case, as and when I can afford them. So, when the opportunity to use two synthesizers arose, I started to use them to enlarge the sound of the band. Consequently there are very few overdubs on this record. The band sounds as it does live. Everyone has contributed to the composition of the pieces either in rehearsal or during the session, so that the direction of the improvising has taken new turns as the writing was moulded to suit the individuals. As a writer my aim is to produce music in which it is impossible to tell what is written and what is improvised. Alan Gowen.

「このアルバムの音楽は1977年から1978年に書かれたものです。バンドには後になってヒューとトレバーが加わりますが、曲のいくつかはフィル以外に誰がバンドに加わるのかわからない時期に書かれました。メンバーの演奏がバンドのスタイルを決めるのに重要なので、私はいつも特定のミュージシャンのために曲を書くことが好きです。メンバーが白紙のまま曲を書くということを魅力に感じたことはありません。私はまた、私にとって有意義だと思い、それを使うことができるときは楽器のために曲を書きます。そこで2台のシンセサイザーを使う機会があったとき、バンドのサウンドを広げるためにそれらを使い始めました。したがってこのアルバムはほとんど多重録音をしていません。ですからサウンドはまるでライブのようになっています。
リハーサルでもセッションでも全員が作曲に貢献したので、まるで個人に合うように作曲されたように、即興演奏によって曲は新しくなったようです。作曲家としての私のねらいは、そこに何が書かれているか、何が即興演奏されるかを予想できない音楽を作ることです。」〜アラン・ゴウエン



英語は苦手で訳に自信はありませんが・・・。このアルバムを作る以前に、ギルガメッシュGilgameshはアラン・ゴウエンAlanGowenとフィル・リーPhilLeeに加えて、MikeTravisと不特定のベーシストで活動し、1975年にはアラン・ゴウエン、フィル・リー、MikeTravis、DaveStewart、JeffClyne、AmandaPersonsというメンバーでアルバム「Gilgamesh」を発表した後解散。オリジナル・メンバーのアラン・ゴウエンとフィル・リーに、ヒュー・ホッパーHughHopperとトレバー・トムキンスTrevorTomkinsを加えて再結成し、このアルバムを発表する、ということになります。先の文章にはその間の様子が書かれています。

アルバムの印象は、円熟したベテランミュージシャンのアルバム、というもので、心地好く、安定感と緊張感が絶妙に溶け合っています。アラン・ゴウエンの作曲家としての才能と、即興演奏家としてのフィル・リーのギター・テクニックが互いに尊重し合い、素晴らしい音楽に仕上がっています。アルバム「Six」を発表した後ソフト・マシーンSoftMachineを脱退し、ツトム・ヤマシタのバンドに参加したりしていたベーシストのヒュー・ホッパー、そしてドラムのトレバー・トムキンスは、決して派手なプレイはしていませんが、貫禄のある安定したサポートで演奏を盛り上げています。

アルバムに収められた曲はどれも私のお気に入りですが、とりわけギターとキーボードのインタープレイがみごとな2曲目の後半、「ThemeFromSomethingElse」が聴きどころではないでしょうか。なおプロデュースはデイブ・スティユワートDaveStewartとなっていて、ここでもカンタベリー派ミュージシャンの人脈の深いつながりを感じます。

このアルバムは1978年にチャーリー・ミュージックCharlyMusicLtd.から発表された英盤のアナログ・レコードです。

1998.5.30