「はにわオールスターズ」という名前は、奇抜な演奏に驚く聴衆が口をあんぐりあけている様子から付けられた、ということを雑誌のインタビューか何かで読んだ記憶があります。私は最初ラジオでファースト・アルバムの「ちゃーのみ友達スレスレ」という曲を聴き、まさに「はにわ」状態になりました。
1983年の12月25日、「クリスマス・ジャム」と」名づけられたコンサートで、はにわオールスターズを見たことがあります。このコンサートには「ナニワ・エクスプレス」「松岡直也グループ」「マリーン」「スクウェア」「チック・コリア」「渡辺貞夫」など錚錚たるジャズ・バンドが出演しましたが、私は「はにわオールスターズ」だけが目当てでしたので、失礼ながら他のグループの演奏の時はロビーなどをうろうろしていました。
仙波清彦さんは、仙波流という和太鼓の継承者ということ。ジャケットの家紋は、仙波家のものだそうです。しかし和太鼓だけに飽き足らず、様々なジャズ・ミュージシャンと親交があり、このグループの結成につながりました。また小川美潮さんをボーカルにフューチャーし、小人数の「はにわちゃん」というグループも同時進行で行っていて、これは神戸のチキン・ジョージで2回ほど演奏を聞いたことがあります。その時、色紙を書いてもらい、Tシャツにもサインを貰いました。私はかなり本格的なファンだったんです。
小川美潮さんは、「チャクラ」というバンド時代から好きなボーカリストでした。自然や生き物を愛でる優しい感性の作詞も素晴らしく、「めだか」という曲は辛いことや悲しいことにあったときなどは、おもわず口ずさみ、慰められます。
このコンサートには、次のようなミュージシャンが参加しています。仙波清彦(コンダクター・その他)、戸川純(ヴォーカル)、デーモン小暮(ヴォーカル)、小川美潮(ヴォーカル)、奥田民生(ヴォーカル)、阿部義晴(ヴォーカル)、木元通子(ヴォーカル)、木津茂理(ヴォーカル)、三橋美香子(ヴォーカル)、渡辺香津美(ギター)、板倉文(ギター)、バカボン鈴木(ベース)、渡辺等(ベース)、吉田智(ベース)、小林靖宏(アコーディオン)、十亀正司(クラリネット)、石垣三十郎(トランペット)、松本治(トロンボーン)、ボーン助谷(トロンボーン)、坂田明(サックス)、ダディ柴田(サックス)、矢口博康(サックス)、金子飛鳥(ヴァイオリン)、斉藤ネコ(ヴァイオリン)、久米大作(キーボード)、清水一登(キーボード)、福原徹彦(笛)、福原百華(笛)、藤尾佳子(三味線)、太田幸子(三味線)、杵屋五吉郎(三味線)、田中悠美子(三味線)、内藤洋子(琴)、内藤久子(琴)、望月左之助(邦打)、仙波大明(邦打)、仙波和典(邦打)、仙波宏紅(邦打)、田淵結(邦打)、若林忠宏(タブラ)、Ma*To(タブラ)、マック清水(コンガ)、田中倫
明(コンガ)、横沢龍太郎(パーカッション)、Whacho(パーカッション)、田中顕(パーカッション)、梶原茂実(パーカッション)、植村昌弘(パーカッション)、鈴木賢治(パーカッション)、村上秀一(ドラム)、青山純(ドラム)、レイチ(ドラム)、安部薫(ドラム)。もう、すごいメンバーです。これらのミュージシャンで演奏される音楽、想像できますか?
演奏される曲も、様々なジャンルの曲です。1.「明るいテレンコ娘」はいかにも「はにわ」らしい曲。和楽器が効果的に使われたポップ・ミュージックです。2.「ウエイトレス」は仙波清彦作曲のインストルメンタル曲。3.「ホーハイ節」は津軽民謡でしょうか。4.「オレカマ」は打楽器の激しいぶつかり合いによるインプロビゼーション。5.「リボンの騎士」を歌っているのは戸川純さんかな?。6.「シューベルトのセレナーデ」はエレクトリック・ベースと琴、三味線、などによる伴奏で聴かせます。7.「この胸のときめきを」はデーモン小暮さんが歌っているようです。8.「奇妙な果実」はビリー・ホリディが歌ったことで有名な曲。9.「続・オレカマ」。10.「体育祭」は小川美潮さん作詞、久米大作さん作曲によるほのぼのとした曲。11.「ブンガワン・ソロ」。12.「大迷惑」は奥田民生さんの曲でご本人が歌っています。13.「水」は、このCD中でも一番の聴きどころ。小川美潮さん作詞作曲です。
ちっちゃなポトリポトリ 家に道に人に
やがてたっぷりたっぷり 上から下に落る降る
山を山を走り 土を土を溶かす
ミネラルをまき込み 高きから低きへ
一筋の流れは はなれてはくっつき
すべるように落ちる 川を川を作る パッパッパ
何にも考えず 見せてくれるありのまま
川は川は流れ 流れ流れ流れ
石を石をけずり 岩にコケを生やす
魚たちは泳ぐ 魚たちはしゃべる
生きるものを生かし 水はただ働き
水はすべるすべる 滝も滝もできる
すごい音もたてる くだけて水しぶき パッパッパ
何もしゃべらずに いろいろなこと言ってるよ
地球の熱を含み 温泉にもなる
私達はそこで あたたまりほほえむ
人は水を飲んで 大きく息をはく
エネルギーをためて また歩き出したよ
米を米を育て 酒を酒を作る
おいしいおとうふも 水道じゃだめなの パッパッパ
動物も植物も 水 水なしじゃ生きられない
そしてあちこちからの 水と水が出会い
ひとつのたばになり 河口へと向かえば
そこは広い広い そこは深い深い
そこはうねるうねる そこはそこは海
潮の流れとなり 水の旅は続く
絶えないその命
そして雲・・・雨・・・キリ・・・
「水」 詞・曲:小川美潮
自然と生き物に対する優しい視線。ダイナミックな「はにわオールスターズ」の演奏は渡辺香津美さんのアグレッシブなギターとあいまって、失神しそうなほど感動的な盛り上がりを見せます。続いて14.「最後のオレカマ」。最後の曲、15.「あいみん」も小川美潮さんの作詞、仙波清彦さんの作曲による曲。この曲も小川美潮さんらしい曲で、私の大好きな曲です。
てっぺんからつまさき 指紋のうずまきまで
楽しく過ごせば もう さよなら
青く澄んだ空のようなあなたが好きよ
だけれど
白く濁る水のようなあなたもすきよ
本当に
どちらもどちらも好きなのよ
ドジふむ私も自画自賛だけどかわいいもんだわ
なんでもかんでもありなのよ
どうでもこうでもかまわないの かまわないのよ
みなさん 今夜はほんとにありがとさん
帰りは ホクホク胸にためていってね
「あいみん」 詞:小川美潮、曲:仙波清彦
「また会いたいと思います」との仙波さんの声でコンサートは終わります。同時代にこんな素晴らしい音楽と出会えたことを幸せに思います。またいつか活動を再会してくれることを、ほんとうに待ち望んでいます。このCDは1991年ソニー・レコードから発売されました。
1998.2.18