<第1回>

観点別評価の方法

兵庫県立西宮香風高等学校 松本吉生

ymatsumoto@hyogo-c.ed.jp

 
 
 
観点別評価とは
   
 

高等学校における生徒の評価は、各教科ごとにあらかじめ設定された内容について、どの程度理解できたか、という学習結果に対して、相対的に評価することで行われてきた。これに対して、生徒の評価を、集団の中でどう位置付けられるか、ということではなく、個々の生徒の学習到達度によって評価すべきである、という絶対評価への転換が求められてきた。また、結果として身についた知識だけで評価するのではなく、生徒の学習活動を多面的な観点で評価するべきだ、という考え方が出てきた。大雑把にいえば、これが観点別評価への流れである。

観点別評価では、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の4つの領域で評価することが一般的である。この4領域は、生徒にとっての評価基準であると同時に、教師にとっても授業計画の基本となるものである。授業の中で「関心・意欲・態度」を高め、「思考・判断」させ、「技能・表現」を発揮させ、「知識・理解」をすけさせる活動を組み込まなければならない。

観点別評価は、学習活動のあらゆる場で実施しなければならない。教師にとって「ペーパーテスト」は最も生徒の評価をしやすい場面だが、それだけではなく、プリントや作品などの提出物、さらに各授業時間中の学習活動も評価の対象にしなければならない。

   
授業時間における観点別評価の方法
   
 

テストや課題など形のあるものについての評価は、時間をかけて行えばよいが、各授業時間における評価はどうすればよいだろうか。40人の生徒に対して、各授業時間に4つの観点で評価をしようとすると、かなりたいへんなことになる。まず、授業時間の最初から最後まで一方的に話すという講義方式では、そもそも生徒の評価など無理である。講義+発問+演習+小テスト、などを組み合わせた授業構成が必要である。

さらに、授業時間内に評価を終えることが望ましい。時間が経ってからでは信頼性が失われるからである。また評価の記録を簡単につけ、集計できるようにしなければならない。事務作業に追われては、教師の本来の仕事に時間を割くことができないからである。

このページでは、授業中の観点別評価について、次のように実施する方法を提案する。

(1)優れた評価を「A」とする

(2)標準の評価を「B」とする

(3)劣った評価を「C」とする

あらかじめ全ての生徒に対する各授業時間の評価を、すべて「B」としたデータベースを用意しておく。そして授業中の「優れた評価」と「劣った評価」についてのみ、○×で一覧表に記入することとし、授業が終了した時点で、データベースに評価を登録する。

○×で入力されたデータは、○=A、×=C、として記録され、変更されなかったものは初期値であるBとして記録が残ることになる。また、登録された評価データをもとにして、SQLServerで、A=3、B=2、C=1、といったように、自動的に数値化して集計することもできる。

   
 
   
InfoPathによるデータ入力フォーム
   
 

InfoPathを使うと、次のようにドロップダウンリストボックスを使って、マウスのクリックだけで評価を登録できるフォームを簡単に作ることができる。

学年制の学校なら「クラス」、単位制の学校なら「講座番号」を選択し、授業日または授業回をしてクエリを実行すると講座の一覧表が表示され、その時間の観点別評価を入力することができる。デフォルトで登録されている「B」評価は「−」で示されている。評価を「A」または「C」に変更する生徒だけドラッグダウンリストボックスで「○」か「×」を選択する。欠席の生徒は、チェックボックスで出欠入力をし、その時間の観点別評価は入力できないようになる。

評価が入力できたら「送信」ボタンをクリックしてデータベースにデータを登録する。

   
 
   
 

観点別評価の概念は確立されたものがあるが、実際に「どう評価するか」については、現場においてさまざまな取り組みが行われている。ここで紹介する例は、授業時間における観点別評価をどう実現するか、の一例である。

InfoPathを使うと、このようなリッチな入力フォームを簡単に作ることができる。このような仕組みを、例えばWebアプリケーションを構築したり、プログラミングによってシステムを構築することもできるだろうが、構築に時間がかかったり専門的な技術を要するものは、学校のシステムとしてふさわしくない。例えば、ABCの3段階をABCDの4段階に変更するといったような、運用の変更に柔軟に対応できないからである。

次回から、この評価システムの作り方を説明していく。InfoPathのフォームつくりだけではなく、SQLServerを使った集計方法も紹介する。また、SQLServerのクエリをAccessで作る「Accessプロジェクト」の使い方も紹介する。

なお、このページでは、特に断りのない限り、InfoPath2003SP1とSQLServer2000、Access2003を使って説明している。筆者のメールアドレスはymatsumoto@hyogo-c.ed.jpだ。

       
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matsumotoyshio.com 2005/06/27