<第1回> |
小テストをInfoPathで作る 兵庫県立西宮香風高等学校 松本吉生 ymatsumoto@hyogo-c.ed.jp |
InfoPathで小テストを作るメリット | ||||
InfoPathはオフィス業務の中で定型文書処理をサポートするアプリケーションソフトである。だがここでは本来のInfoPathで想定されているオフィス業務から離れて、学校の授業で使う、あるいは生徒が自習するためのツールとしての可能性を考えた。 InfoPathで小テストを作るメリットは何か。まず第一に、インタラクティブなフォームを簡単に作れるということがある。インタラクティブな仕組みを作るには、Webアプリケーションにするという方法が考えられる。しかし、CGIやASP.NETを使って動的なページを作るには、相当の知識を必要とする。サーバの構築も簡単ではない。だがInfoPathを使えば、ここで紹介するような小テストなら、一行もコードを書くことなく作ることができる。 二つ目のメリットは、集計が簡単なことである。たとえばAccessを使い慣れた人なら、リッチなコントロールを使って利用者から入力を求めるフォームを作ることができるだろう。だがアクセスを使うと、集まった別々のアクセスファイルから生徒の解答結果をひとつのデータとしてまとめることが難しい。InfoPathならXMLデータとして保存された複数のファイルを、たった一度の操作でまとめることができる。 三つ目のメリットは、問題の配布や解答の回収方法に自由度があることだ。ネットワーク上に問題ファイルを置き、解答を保存する、電子メールで問題を送り、回収する、SharePointPortalServerを使って問題の配布、回収を行う、などである。問題を受け取ったら、解答して送信するまで、ネットワークが接続したままである必要はない。 以上のようなメリットに加えて、実際に問題作成をしてみると、専用のe−ラーニング向け教材作成ツールと比べても遜色のないインタラクティブ性が得られ、本格的なテスト問題を作ることができることがわかった。 まず第一回は、小テストを実現する仕掛けを、InfoPathでどのように実現できるのか、その概要を説明する。 |
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複数のビューを使って問題を切り替える | ||||
InfoPathではひとつのフォームに複数のビューを設定することができる。そしてフォームにボタンを貼り付け、ボタンをクリックしてビューを切り替えることができる。このビューの切り替えを使って、問題1、問題2、問題3、といくつかの問題を、順番に解答させていく仕掛けを実現する。 |
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ドロップダウンリストボックスによる解答入力 | ||||
解答を入力する部分をドロップダウンリストにすることで、マウスのクリックによって解答を入力することができるようにする。このようにすると、想定外の解答データが入力され、集計のときに判別できなくなるミスをなくすことができる。 |
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動作規則の条件の設定で解答入力をうながす | ||||
フォームに配置したコントロールに入力された値を読み取り、「動作規則」の「条件の設定」で、解答者に注意をうながす仕掛けをつくることができる。たとえば、3つの質問を設定したとき、すべての質問に解答を入力しなければ、注意をうながすダイアログが表示され、次の問題にすすめないといった設定ができる。設定によっては、ダイアログの表示はするが、それを無視して次に進めるようにも設定できる。 |
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選択肢から同じ解答を複数選べないようにする | ||||
複数の質問があり、その解答を選択肢から選んで答える場合に、同じ解答を複数選べないようにしたいときがある。このときも「動作規則」の「条件の設定」で、もし同じ解答を選んだときは、先に答えた項目が消去されるような設定ができる。 |
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文章中の穴埋め問題で同じ語句が複数個所に出現することに対応する | ||||
文章中の穴埋め問題で、文章の流れにおいて、複数個所に出現する語句を問題にしたい場合がある。このとき、同じフィールドを使えば、一つの解答欄に入力をすると、自動的に複数の解答欄に解答が反映される仕組みを作ることができる。こうすることで解答者は、題意を把握することに集中できる。 |
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小論文形式で文字数の制限をする | ||||
小論文形式で自由に解答を書かせる場合、文字数の制限をしたいことがある。この場合も「動作規則」の「条件の設定」で、文字数が少ないとき、あるいは多すぎるときに注意をうながすダイアログを出すことができる。文字数をクリアしなければ次へ進めないようにもできるし、無視して次へすすめるように設定することもできる。 |
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小論文形式でキーワードを使わせる | ||||
小論文形式の問題で、教科的な概念を知っているかどうかを評価したいとき、キーワードを設定する方法がある。このときも「動作規則」の「条件の設定」で、キーワードを含まないときに注意をうながすダイアログを出すことができる。 |
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短時間でリッチなインタフェースの小テストを作ることができる | ||||
このようにリッチなインタフェースを持った小テストを作ろうと思えば、WebアプリケーションにしてもAccessのフォームにしても、かなりの時間をロジックの作成に費やすはずだ。だが教員が使うべき時間は、アプリケーションのロジック作成にではなく、教材研究と問題作成である。 そしてInfoPathを使えば、このような仕掛けを作るために一行もコードを書く必要はなく、フォーム上に貼り付けたコントロールのプロパティを設定するだけである。多くの時間は必要ない。 次回から、この小テストをどのように作っていくかを説明していく。いかに簡単な手順で作成することができるかがわかるはずだ。そして最終回では、集まった答案ファイルをExcelで一括して採点することをやってみる。採点のための集計は「アンケート集計」と同じ手法を使うので、「アンケート集計」を見ればだいたいはわかるだろう。 なお、このページでは、特に断りのない限り、Excel2003とInfoPath2003SP1を使って説明している。Excelの旧バージョンはXMLの対応が完全ではないので、同様の結果が得られないことをあらかじめ断っておく。筆者のメールアドレスはymatsumoto@hyogo-c.ed.jpだ。 |
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matsumotoyshio.com 2005/06/25
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